カテゴリー「志川節子」の9件の記事

2017/11/03

煌(きらり)[志川節子]

煌(きらり)[志川節子]

 志川さんの新刊が出た。
 徳間書店からでした。

煌 志川節子/著 (徳間書店)

 実は最初Kindle版を買って、読み始めたのですが。

煌(きらり) Kindle版

 その後、紙の本を手にすると、なんと綺麗な本なのかと。

煌(きらり)amazon

 Kindleって便利ですが、紙の本の情緒とは違いますね。
 ということで、紙の本になると、一気に読んでしまった。

 さて、今回は、花火をテーマにした連作。
 それぞれ時代が違うので、登場人物のリレーはなし。

舞台も、吉田(豊橋)、市川大門(山梨県甲府盆地近辺)、長崎、江戸、長岡、そして最後にまた、吉田に戻ってくる。

 飯盛り女とその息子、紙商人と職人そしてその姉、丸山遊女と蘭人、盲人になった細工職人の娘と父親、長岡遊女と新潟遊女、旅籠家と医者。

 彼らの愛・恋・友情などの人間関係、想いが、あるときは淡々と。
 そしてあるときは、切々と描かれていく。

 そして、今回の作品の感想ですが。
 特に、行間に込められた余韻を重視している気がしました。

 人によっては、そっけないと感じないかと思うほど。
 でも、読んでいくと、じんわり伝わる感じで心地よい。

 個人的には、おりよちゃんの話がすきですね。
 うん。

 いろんな絶望的な中でも、心に残る光がある。
 それが、煌というタイトルに「きらり」と打たせた理由なのかな。

 いや、私の勝手な考えですけれど。

 是非、この美本を手にとってみて欲しいなと思います。

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2015/08/28

「花鳥茶屋せせらぎ」(志川節子)発刊

「花鳥茶屋せせらぎ」(志川節子)発刊


「花鳥茶屋せせらぎ」
 志川節子
 祥伝社 平成27年9月10日初版第1刷発行

 「小説NON」の連載が、ついに単行本になったのですね。
 本屋では、「小説NON」が、なかなか見つからず。

 飛ばし飛ばしで、途中までしか読めてなかったので。
 通して読めるのは、とても嬉しい。

 手にとって見て。
 表紙の美しさが、まさにこの本を象徴している。

 舞台は、花鳥茶屋。
 珍しい鳥獣を見世物とした茶屋で、江戸時代に繁盛したらしい。

 この茶屋の周辺に集う若者達の、青春群像とでも言うべきか。
 登場人物たちは、悩みつつも、皆まっすぐな気持ちを持っている。

 それでも、彼らが浮いた感じにならないのは。
 その悩みが、現実に読者が共有できる気持ちだからなのでしょう。

 志川さんの筆も、まさに、せせらぎのように、流れていったのでは。
 そんな気持ちで読んでいける作品でした。

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2014/05/21

「結び屋おえん 糸を手繰れば」志川節子

「結び屋おえん 糸を手繰れば」志川節子

結び屋おえん 糸を手繰れば
志川節子/著 新潮社
発売日: 2014/05/22

http://www.shinchosha.co.jp/book/335671/

 待望の志川作品。
 新潮社で書き下ろし。

 なんというか、本の佇まいが、良い本なんですよね。
 持った時の紙の手触りも、いい雰囲気で。

 表紙のイラストもしっくり来る。
 淡い雰囲気と女性の目線がなんというか。

 例によって、テーマに沿った連作ですが、主人公は、おえん固定。
 誤解から離縁された女性が、縁の中で、縁結びを職とすることになる。

 そして、他人の縁を繋ぐ中で、おえんが自分自身の立ち位置を見いだしていく。
 夫、息子、姑、実家、まさに現在の家族の悩みに繋がっているのですね。

 この作品は、この先を書くこともできるし。
 あるいは、書かずにこのままで終わることもできる。

 そんな書き方になっている。

 もし書くとすれば。
 おえんの哀しみの奥底にある「喪失」への答えが書かれるのだろう。

 この場合「喪失」の意味は1つではない。
 そして、回復できる喪失もあれば、回復できない喪失もある。

 回復できない喪失に、おえんをどう向き合わせるのか。
 そして、そこでどのような癒やしを与えるのか。

 続編がでるのであれば、期待したい。

 で、本編そのものも、当然、堪能させて頂きました。
 なんてたって、夜中に読み続けてしまって、今眠いんだもの。

 なお、小説NONの5月22日発売号でも掲載されているらしい。
 本屋へGOですな。

結び屋おえん 糸を手繰れば(amazon)

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2013/12/15

花鳥茶屋せせらぎ 「一話 山雀の女」志川節子

花鳥茶屋せせらぎ 「一話 山雀の女」志川節子

 祥伝社の小説NON平成25年12月号掲載。
 不定期のシリーズ連載になるらしい。

 「山雀の女」は「やまがらのひと」とルビがある。
 つまり、目線は、男性側にあるってことだ。

 主人公は、鳥かご職人見習いである勝次。

 彼は、客として、旦那に連れられてきた女お絹に魅せられていく。
 幼なじみのひなたの気持ちも知らず。

 たぶん世の中でよくある、しかし、誰もが自分の記憶の引き出しをもう一度覗き込むような、それができるのが、作者の技量なのでしょうね。

 私はモロに作者の狙い通りになってしまったような気がする。
 ということで、ちょっと感情移入してしまいました。

 連作なので、第2話を楽しみにしたい。

 ところで、作者紹介を見ると、直木賞候補になったとあるじゃありませんか!

 知らなかったです~。

 こういう賞はすぐにとれるわけではないでしょうけど。
 でも、いつかおめでとうございますと、言わせて下さい。

amazon 小説NON (ノン) 2013年 12月号

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2012/08/24

「春はそこまで」志川節子

 ついに、志川さんの時代小説本が届いた。
 amazonで予約していたので、発売日になったら、すぐに来た。

春はそこまで 風待ち小路の人々
志川節子著

 本作は書きおろしらしい。

 今回も、前作「手のひら、ひらひら―江戸吉原七色彩(もよう)」同様、各話の主人公が、次の話に登場して、連なっていくスタイル。

 江戸の商店街「春待ち小路」の人々の話が次々と展開していく。

 最初の話では、初老が近づいた絵草紙屋のあるじが主人公。思うに、筆者は、男のいやらしさや浅ましさのようなものを、残酷に表現することが少なくない。この話でも、絵草紙屋の主人は、ある意味自業自得とは言え、幾つかの失望を味わわされることになる。

 ただ、今回の話は、そこから先、ちょっと前作とは色あいが違う。つまり、彼は幾つかの失望を味わいつつも、その先で、ある種の幸福を味わえるのだ。前作では、女の情念を書き込んだような部分もあったが、今回は、そのあたり、筆を抑えたのかもしれない。

 なお、この本全体を通しての主人公は、絵草紙屋のあるじの跡取り息子である。この息子と父親との関係は、本当によく見かける、経営者親子の関係そのものだと思う。

 ではあるが、私はどちらかと言えば、父親側に感情移入してしまった。本来息子の立ち位置の筈なのだが、何故だろうか。

 久々に堪能できたと思う。
 読み終えると、あぁ、また次作を楽しみに待つしかないのですな。

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2009/04/15

手のひら、ひらひら 江戸吉原七色彩 志川節子

手のひら、ひらひら 江戸吉原七色彩 志川節子
文藝春秋 2009年4月10日 第1刷発行

 ついに志川さんの著書が出た。
 半年ほど前から、準備中らしいよとUさんに聞いてはいたのだが。

 オール読物に掲載された、
・しづめる花
・うつろい蔓
・手のひら、ひらひら
・穴惑い
の4作に加えて、

・白糸の郷
・掴みの桜
・浮寝鳥
の3作が書き下ろされている。

 個人的には、「しづめる花」の続編となる「浮寝鳥」がいろんな意味で印象深かった。

 染里(お紺)の気持ちはもちろんだが。
 上ゲ屋として染里を仕込んだ紀六の最後の笑顔。
 狂わんとした小雛の笑み。
 そして、実は、清太郎の心にも強く心を揺さぶられる部分があった。

 虚の世界で、なんとか真実を見ようとして足掻く。
 それが、人間の悲しさであり、また美しさであるのかもしれない。
 そんな気持ちにさせられる1冊。

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2008/08/01

穴惑い 志川節子

■穴惑い 志川節子

 オール読物の2008年8月号に掲載された志川さんの新作。
 ほぼ半年に1回の発表ペースだからそろそろかなと思っていた。

 今回の主人公お露は、文使いを生業にしながら娘のお咲を育てている。
 手蹟まねを得意として一定の評価を得ているが、やはり元は苦界の住人。

 彼女の心の惑いを蛇の彷徨う姿になぞらえたのがタイトル。

 人はみな惑いながら自分の人生を選び取っていく。
 それが間違っているのか、正しいのか、それは分からないけれど。
 ただ、全ては自分が選んだものであり、なにもかも自分が引き受けて生きていく。

 そういう志川さんの人生観というか強い決意というか、そういったものが彼女の作品群から滲み出ている気がする。

 また冬になって次の作品に出会えるのを楽しみとしたい。

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2007/12/04

「手のひら、ひらひら」志川節子

「手のひら、ひらひら」志川節子

 オール読物2007年12月号に志川さんの新作が掲載された。前回の作品が6月号だからペースを掴んだという感じなのかもしれない。

 今度の作品もやはり苦界・吉原が舞台。ただし、主人公は女性ではなく、手のひらを揉みほぐすことで、女達の疲れを癒し、体に潤いを与える豆吉である。

 彼は、妓の手の膚を触ることで、彼女たちが妓夫に籠絡される兆しを察知するという特殊技能を持った、妓楼の「目付」だ。そんな彼が子守の頃から面倒を見てきた妓楼の主の娘まちに厄介事を頼まれてしまう・・・。

 前回の作品と同じく、今回の作品も苦界に生きる者の苦悩を扱ったものだが、今回の方が読後感としては淡さのようなものを感じる。それは、主人公が男になったからなのかもしれない。

 こんなことを言うと誰かに怒られるかもしれないが、女性よりも男性の方がピュアなのかもしれないと思わせる、そんな作品であった。自分自身のことをさておいて言ってしまうが。

 また次の志川さんの新作が出るのを楽しみにしたい。

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2007/08/25

「うつろひ蔓」志川節子

 オール読物2007年6月号に掲載されている「うつろひ蔓」をようやく読んだ。
 作者の志川節子さんは10年以上お会いしていないが、かつての職場での知人である。

 S先生から作家として受賞してデビューしたそうだよという話を伺ったのが2年ほど前だったろうか。
 その後1つ作品(「しづめる花」)を拝読し、多分これが2つ目になる。Uさんから新作が出たよと聞いて入手したのに、なかなか読めないままになっていた。

 吉原花魁であったお蓮は保チ屋の女房として迎えられたものの、どうして夫は自分と結婚してくれたのかを問えず、心を迷わせている。そんな中、ふとした偶然から飛び込んだ賭場で出会った男と過ちを犯し、深みにはまっていくお蓮。半ば自暴自棄になる中で、亭主の気持ちを知り、それでも駆け落ちに身を委ねつつあったお蓮は・・・。

 この時代に、かつて苦界に身を委ねた女を描くことで作者が描き出そうとしたものが何であったのか、それは多分、大人の情愛というか情念だったのではないか、そんな気がしている。

 そんな情念が書き込まれたこの小説は、作者の志川さんのかつての職場での姿しか知らないものとしては少なからず驚かされる気がする。それほどの情念を持った女性だったのかという感慨に近い思いがある。

 しかし、実は、この話の中のお蓮の行動、気持ちが痛いほど分かる気がする自分にもっと驚いている。
 人間の気持ちというのは、自分ですら分からない。そんな気持ちになっているからかもしれない。

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