カテゴリー「会社法」の74件の記事

2017/02/03

会計処理の適切性をめぐる裁判例を見つめ直す(第2回 継続性の原則-阪急電鉄事件)

会計処理の適切性をめぐる裁判例を見つめ直す(第2回 継続性の原則-阪急電鉄事件)

会計・監査ジャーナル2017年2月号より。

〇会計処理の適切性をめぐる裁判例を見つめ直す
 第2回 継続性の原則-阪急電鉄事件
 弥永真生(筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授)
  第1審 大阪地裁平成15年10月15日
  控訴審 大阪高裁平成16年4月27日
  上告審 最高裁平成17年8月3日(上告棄却・上告不受理)

 阪急電鉄は、過去において、工事負担金を受領するも、圧縮記帳をせず。
 特別利益として損益計算書に計上していた。

 ところが、経営改善計画を策定し、減損会計導入等に備えて投資損失引当金を設定
 もし圧縮記帳処理していれば、147億円の法人税等を節減できた。

 このため、株主らが善管注意義務違反・忠実義務違反による損害賠償請求で。
 株主代表訴訟を提起したのだと。

 大阪地裁は、継続性の原則違反を例外的な場合に限ると判断した。
 高裁も、これを基本的には踏襲する判決だった。

 弥永教授によると、過去、圧縮記帳すべきか認める見解は商法では有力だったが。
 1980年代以後は、圧縮記帳すべきでない、が多数説になったのだと。

 大阪高裁は、これを踏まえて、正当な理由によらない会計方針変更と言えないと。
 その際に業種別監査委員会報告29号が、影響を与えたとの指摘がある。

 なお、国際会計基準での繰延収益処理つまり負債計上処理について。
 株主は正当処理と主張したが、当時の法務省はそうは認めていなかったと。

 なんか、ふーん、それで、なんですよね。
 私の読み取りが甘いんだろうな。

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2016/12/23

複数の「公正ナル会計慣行」-長銀事件(弥永教授の新連載)

複数の「公正ナル会計慣行」-長銀事件(弥永教授の新連載)

 会計・監査ジャーナル2017年1月号より。

〇会計処理の適切性をめぐる裁判例を見つめ直す
 第1回 複数の「公正ナル会計慣行」-長銀事件
  弥永真生(筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授)

 民事事件・刑事事件の両方とも、最終的には最高裁に行ったので。
 都合6つの裁判名が冒頭に掲げてある。
 
 刑事事件の最高裁(平成20年7月18日)は、税法基準での査定について。

 過渡的な状況では、これまでの公正ナル会計慣行たる税法基準依拠について。
 直ちに違法であったということはできないと判事した(補足意見あり)。

 ここで、標題の複数の「公正ナル会計慣行」という話が出てくる。
 このように過渡的な局面で生じる他、中小会社では複数同時存在し得ると。

 うーん、前者はともかく、後者って、どこかで説明が補充されるのでしょうね。
 いろいろ問題を引き起こしている部分であり、結論だけではちょっと。

 で、民事事件の方は、高裁判決が、最高裁の不受理・上告棄却で確定。
 これは上記刑事事件と同じ日なのですね。

 で、不意打ち防止措置や、周知徹底などの5要件充足がなければ。
 新たな会計慣行は、法規範性として未だ未熟ないし不完全だと。

 つまり、複数の公正なる会計基準の競合が生じた場合に。
 下剋上が成立したというのには、それなりの要件が必要だと。

 なるほどなのですが。
 このような結論を裁判によって得ないといけないということが悲しい。

 金融庁が、従来の現場を軽視する態度は、今に始まったことではないのですが。
 結局、そのような行政は、後で余計に問題を大きくすることを学んでほしいと思う。

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2016/11/15

非監査業務に注力し、監査業務の品質管理が脆弱との指摘

非監査業務に注力し、監査業務の品質管理が脆弱との指摘

 金融庁サイトでの勧告ですが、ドキッとする事務所もあるのでは。


監査法人よつば綜合事務所に対する検査結果に基づく勧告について(公認会計士・監査審査会)

 よつば綜合事務所って、神門剛先生が代表でしたね。

代表者紹介

 かつて、「留保金課税の実務」には、お世話になった気が。

 しかし、勧告における指摘内容は厳しい。

「1.業務管理態勢 最高経営責任者である代表社員(以下「代表社員 CEO」という。)は、非監査業務の拡大に注力する中、グループ法人の運営に主として従事しており、他の代表社員も、自己の個人事務所の運営に主として従事していることから、いずれの代表社員も当監査法人の品質管理業務にほとんど関与していないだけでなく、監査実施者の専門的能力が不足しているなど監査実施態勢が脆弱であることを認識していない。」

 要するに、税務中心なので、監査の品質向上意識がないだろうと。

「2.品質管理態勢 (独立性等の確認) 当監査法人においては非監査業務のウエイトが高く、またグループ法人から非監査業務を受託しているなど、独立性の確認手続は重要なものとなっている。しかしながら、 独立性の確認手続を職員に任せきりにしていることから、独立性の確認に関連して入手 すべき確認書について入手できていないものがみられる。また、インサイダー取引防止 に関連して入手すべき業務提供先の特定有価証券等の売買等を行わない旨の誓約書についても入手できていないものがみられる。」

 税務やコンサル中心だから、利益相反問題への意識も甘くなるでしょと。

「3.個別監査業務 代表社員 CEO を含めた業務執行社員は、不正に関連した監査の基準や収益認識に関連した項目を含め、現行の監査の基準で求められる水準に関する理解・知識が不足してい る。 このようなことから、会計基準に反する売上計上が判明し過年度の決算書を訂正するに至った監査業務において、職業的専門家としての懐疑心を発揮して不正による重要な 虚偽表示を示唆する状況に該当するかを十分に評価すべきであるにもかかわらず、被監 査会社の誤謬であるという主張を批判的に検討することなく受け入れている。」

 古い知識のままで、今の基準や実務にアップデートできていないと。

「このように、検証した個別監査業務においては、重要な不備が認められるほか、広範 かつ多数の不備が認められるなど、当監査法人の個別監査業務は著しく不十分である。 」

 うーん、ここまで書かれちゃうんだ。

 ただ、監査業務と税務業務を同時にやっている中堅公認会計士事務所では、決して他人事ではないでしょうね、これ。

 私は、現在、監査業務ゼロなので、この手の心配はないのですが。
 世の中厳しくなってきましたね。


 

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2016/10/27

二段階買収の実務と法的論点

二段階買収の実務と法的論点

 法学教室2016年10月号より。
 特集 組織再編をめぐる会社法上の論点。

〇二段階買収の実務と法的論点
  中山龍太郎(弁護士)

 二段階買収は、

[1]公開買付けにより議決権保有割合を上昇させる
[2]残存している少数株主を排除するスクイーズアウトを実施する

 との二段階による買収で、完全子会社化する手法だという。

 平成26年改正会社法施行後だけでも。
 既に、26件の上場企業が二段階買収を実施していると。

 改正前は、全部取得条項付種類株式による手法が多用されたが。
 買収側が大多数になっていても、時間や手続が煩雑だったので。

 より機動的なスクイーズアウト手法として手続が新設された。
 それが、特別支配株主の株式等売渡請求制度であると。

 更に、株式併合の手続も改正され、少数株主保護規定が整備された。
 このあたりの改正を受けて、主流となる実務が既に形成されていると。

【1】第1段階での公開買付けにより90%以上保有となった場合

 この場合、株式等売渡請求制度の利用が主流となっていると。

 対象社の総会手続や端数処理手続が不要なので。
 時間的・手続的コストが低いのが理由なのですね。

 また、併せて新株予約権売渡請求を行うことも可能なので。
 特別な手続きを行わずに済むメリットもあるのだと。

【2】第1段階での公開買付けにより90%以上保有に至らなかった場合

 この場合、従来多用された、全部取得条項付種類株式に代わって。
 株式併合を用いるようになってきたのだと。

 少数株主保護で、実質的な差異がないのなら。
 より簡易な手続である株式併合方式が主流になるのは自然だと。

 この結果、「実務も株式等売渡請求と株式併合への収斂を見せつつある」と。

 上場企業向けの知識なのでしょうけど。
 実務の主流が分かって、勉強になりました。

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2016/06/16

総会決議事項の登記に添付する「株主リスト」に関するQ&A

総会決議事項の登記に添付する「株主リスト」に関するQ&A

 T&Amaster2016年6月6日号より。

○ニュース特集
 中小企業は株主名簿の整備が急務!
 総会決議事項の登記に添付する「株主リスト」に関するQ&A

 平成28年10月以後の登記申請から、登記実務が変わる。
 株主リストが、登記の添付書類に加わるから。

 で、法務省がパブコメを実施した。
 その結果別紙の内容紹介が中心の記事。

 意見募集の結果(別紙)

 法人税申告書別表2を使えないのかとの問いには。
 そのままは使えないけどと、以下の回答があった。

「「同族会社等の判定に関する明細書」の記載事項は,「株主リスト」の記載事項と全てが一致するものではないので,株主リストの代替としてこれをそのまま用いることは困難と考えられます。
 もっとも,株主の数が少ない株式会社においては,同明細書の記載内容は,「株主リスト」に記載すべき内容と大部分で重なるものと考えられます。
 そこで,申請人の負担を考慮し,今後,そのような会社を念頭に,同族会社等の判定の明細書を利用した「株主リスト」の記載例を法務省のホームページに掲載することを検討しています」

 できるだけ、みんなの手間が少ない方法期待ですね。

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2016/06/05

上村教授の「日本の会計・監査制度」その3

上村教授の「日本の会計・監査制度」その3

 会計・監査ジャーナル2016年6月号より。

○日本の会計・監査制度
 -資本市場の中核を担える態勢とは(Ⅰ)
  上村達男(早稲田大学教授)

 続きです。

 ただ、会計士側の問題だけというわけではない。
 今の証券行政は、本来の在り方からはっきりズレている。

 東芝問題では、何故会計士処罰だけがスムーズなのか。
 会社自身の処罰は遅々として進まないのは、これで良いのか。

 上村教授の問題意識に、正直、なるほど、でした。
 単に、行政の対応のおかしさに憤慨するだけではダメ。

 どこに今回の問題の本当の根っこがあるのか。
 それは、自分達が本来やるべきことが何かを全員が自覚すること。

 自分以外の他人の批判ではなく。
 本人を含め、当事者が皆根本の問題に立ち向かわなければダメ。

 そもそも、資本市場法規制の中、会計・監査はどうあるべきなのか。
 もう一度、立脚点から考え直さなければ、業界に未来はない。

 関根愛子会長が、どんな判断・采配を見せるのか。
 それは分かりませんが。

 極論すると、この20年、業界は、基準の精緻化にあけくれた。
 国際化対応と言えば聞こえは良いが、本質の問題から逃げていた。

 しかし、もう一度問い直さなければならないのでしょう。
 何のために会計は必要で、何のために監査が必要なのか。

 それを万人が納得するように、何ができるのか。
 新執行部の課題は極めて重いのでしょうね。

 で、上村教授の稿は連載のようですので、次回も期待しています。

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2016/06/04

上村教授の「日本の会計・監査制度」その2

上村教授の「日本の会計・監査制度」その2

 会計・監査ジャーナル2016年6月号より。

○日本の会計・監査制度
 -資本市場の中核を担える態勢とは(Ⅰ)
  上村達男(早稲田大学教授)

 続きです。

 ところが、日本の会計・監査の理論的根拠はというと。
 実は、米国の資本市場対応型のそれだった。

 本来、継続性公準は、資本市場の継続が前提となる。
 費用収益対応原則も、同様で、それを踏まえた資産・負債観。

 しかし、企業会計原則も証券取引法もそんな意識はなかった。
 そもそも、原初形態から言えば、捻れが生じていたのですね。

 これが、バブル崩壊による護送船団方式行政が転換。
 一気に、市場規制型となり、資本市場規制が強化された。

 結果、会計や監査と縁遠かったような金商法の位置づけが変わる。
 会社法において、金商法適用会社として一体化することになる。

 原初の米国の連邦証券規制と一体の本来の論理に立ち戻る。
 そのような方向に、現在の会計・監査・市場法は向かっていると。

 なるほど、実は、期待ギャップというか認識ギャップが。
 会計士自身に生じているのを自覚できなかったのかもしれない。

 ある種会計優位の価値観が刷り込まれた人間が大半なのだから。
 金商法がいきなり中心になっていくのに、戸惑いさえあったろう。

 続きます。

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2016/06/03

上村教授の「日本の会計・監査制度」その1

上村教授の「日本の会計・監査制度」その1

 会計・監査ジャーナル2016年6月号より。

○日本の会計・監査制度
 -資本市場の中核を担える態勢とは(Ⅰ)
  上村達男(早稲田大学教授)

 結論から言えば、公認会計士には、必読の稿と思います。

 明治初期の株式会社は、上場会社が当然だった。
 募集設立とは、設立時にいきなり公募設立の意味だった。

 厳格な設立規制や厳格な資本規制は、上場基準の意義。
 資本充実原則とは、上場基準遵守の意義だった。

 つまり、株式会社は公開株式会社として存在していた。
 ところが、市場の担い手として、公衆を想定していなかった。

 当時の株式会社は、小規模閉鎖会社が対象であったし。
 証券取引法は、業者規制法であり、裁判規範ではなかった。

 このため、日本の会計・監査は独自の発展を遂げる。
 米国のように法律の圧力なく、それ自体の権威に依存できた。

 なるほど、言われればです。
 本来の在り方から離れた、歪んだ発展を遂げてしまったのだ。

 続きます。

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2016/05/08

中小企業M&A実務必携 法務編

中小企業M&A実務必携 法務編


中小企業M&A実務必携 法務編
梅田亜由美(司法書士・株式会社日本M&Aセンター)
株式会社きんざい
平成28年3月12日初版

 いや、まだ買って全部読んだわけじゃないですが。
 これ、お勧めだと思います。

 正直、今までの弁護士さんの本だと、内容高度過ぎ。
 で、基本として押さえるべきことが見えなくなる。

 この本は、地に足が着いている良書だと思います。
 例えばですが。

○3-3 地目が「田」「畑」とあったら?
○3-4 甲区に見慣れない登記がある!?
○3-7 市街化調整区域に建物が建っているけど?

 このあたり、弁護士さんの本では見たことないですし。
 しかし、中小企業にとっては、当然欠くべき事項ですよね。

 で、株式関係も、

○1-3 株主のとりまとめはどうする?
○1-7 従業員持株会の株式を譲渡するには?

 更に、

○2-2 株券を作成しよう

 など、まさに知りたい論点が満載。

 M&Aに携わる人だけではもったいない。
 中小企業の法務について、好著だと思います。

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2016/03/20

「株主リスト」を添付書面とする商業登記規則の改正案等について(登記情報)

「株主リスト」を添付書面とする商業登記規則の改正案等について(登記情報)

 「登記情報」2016年3月号より。

○登記実務からの考察
 「株主リスト」を添付書面とする商業登記規則の改正案等について
  内藤卓(司法書士)

 1月29日に出た省令案についての解説。
 株主総会決議が必要な登記申請の添付書面に、株主リストを追加すると。

 上位10名ないし議決権割合上位3分の2までの株主が対象なのですが。
 株主名・住所・有する株式数・議決権数・割合を記載しろと。

 省令案に基づく証明書例の記載があるので、イメージ湧きやすい。

 また、附属書類の閲覧申請者に、住所や閲覧部の記載を求めると。
 更に、利害関係を証する書面もつけろと。

 結構、手間増えそうですよね。

 現時点での疑問点として、幾つか。

1)株式会社以外の法人は、この動きに追随した改正があるのだろうか。

2)今後、司法書士さんに登記を頼むと、住所の真正性について、大きな負担が生じる実務運用になるのだろうか。

3)利害関係を証する書面って、何を出せばいいとされるのか。また、それで問題ないと法務局が判断して、本当に問題は生じないのだろうか。

 内藤先生の続きの原稿を期待してます。

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