保険による「節税」が終わりを告げる日
個人的には節税って言葉が好きじゃない。それは、なんか倹約するってイメージだからである。しかし、世の中で節税と呼ばれている税負担軽減策の多くはそうではない。
ま、その話は別の機会にするとして、ここでは保険による税負担の軽減という行為が将来無意味化する可能性について考えてみたい。
まず、1つめは、保険商品に対する会計基準の策定という問題である。現在、金融商品会計基準では保険商品を対象外としているが、本当はインチキである。典型的な「キャッシュフロー操作ツール」なのだから。
で、実は現在国際会計基準で、保険商品の会計基準策定が進んでいる。これが出てくると国内基準も影響を受けるのは間違いないとともに、金融商品会計基準のときのように、税務もこれを受けて対応してくるものと予測できる。
(おそらく今リース会社各社は戦々恐々であろう)
つまり、現行の保険商品が税負担を軽減する際に、原則論として使えている、「支出額=費用額=損金」という構図に待ったがかかる可能性が高いのである。
もちろん、現行の短期前払費用特例通達2-2-14の適用除外も含めて、期間損益の適正化の印籠の前に、解約返戻金部分の操作による税負担軽減がほぼ完全にシャットアウトされる日が来るだろうというのが、私の予測である。
ちなみに、このように予測する根拠は、既にこれらの効果が測定できているからである。測定できるものは分離抽出しろと言われても文句が言えない可能性が高い。現行通達は、デリバティブ革命以前のものであり、現在のように金融工学の進展によって、各種の測定が可能になることを想定していなかった時代のものなのである。
さらに2つめだが、保険による税負担軽減策の多くは、退職所得・一時所得による1/2課税のメリットがあってこそ旨味があるものが多い。ところが、この点は、ご存じのように、現在、税調で見直しが示唆されており、将来的には現行制度とは異なる姿になる可能性が高い。
この2つの点を考慮すると、現行の税負担軽減目的主眼の保険セールスには決して明るい未来はない。
で、問題は、保険という商品は、一度にお金を出して買って終わりという商品ではなく、継続的にキャッシュフローの流出が続いていく商品であり、その税効果が判明するのは、将来、制度が変更されている可能性のある未来においてであるという点である。
もちろん、セールス各社はこれについて、多くの場合、念書を取るようにしているのだが、結果が裏目に出た際には、大問題になってしまう。先日出た長期傷害保険通達もその例であったようである。某社からは封筒1つが来ただけで、謝罪の電話もなかったと怒っている経営者は、もう解約すると息巻いていた。
これが保険大解約時代の始まりにならないよう祈るばかりである。アーメン。
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