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2006/07/13

出口を考えない「節税」対策

 世に言う「節税」の多くは、一見トクをしているように見えて、本当にそれがトクになるのか怪しいものが多々ある。だから「節税」って言葉が大嫌いなのだが。 あ、飯塚毅も映画の中で「節税」って言ってたな、そういえば。

 それは、ある時点ないしある期間だけを切り取って、「節税」になると提案されるからである。

 たとえば、法人成りが節税になるかどうかというのは、本当は最後に法人にリザーブされた資金を、いかにロスなく個人サイドに取り出せるかを考えておかないと、真の意味ではトクになるかどうは怪しい。しかし、少し個人事業が儲かると、すぐに法人成りをすすめる人たちがいる(この件は以前essayで書いた)。

 確かに、一定期間だけを見ると、個人のままだと支払うべきだったものを、支払わなくてよくなったのでトクした気がするわけだが、実は、虎の子は法人内にまだ残ったままなのである。しかも、そちらは、個人自身のものと違って、勝手に使ってしまうわけにはいかない

 これまで、ある種、ゴールデンパラシュートの役割を果たしてきたのが役員退職金である。最後で退職金を支払ってフィニッシュすれば、ちゃんと出口が見えるじゃないのと。

 ところが、これがなかなか怪しくなってきている。

1)退職金を支払うべきタイミングで会社の業績がよいとは限らない。つまり、保険などで退職金原資を用意していても、これがアジャストできない可能性があるのだ。後継者がいれば、その時点で会社を潰すわけにもいかないということもある。実際、こういう例は近年少なくない。

2)既に何度か書いているように、退職金の退職所得としての受給側の有利性が、税制改正でなくなる危険性が見えて来つつあるということである。

 これらを考えていくと、少なくとも税務だけを考えて法人成りするってのはそう単純にGOサインが出る話じゃないってことが見えてくる。18年税制改正はダメ押しだということに過ぎないというのが私の感想である。

 結局、別に税務に限らないのだが、各種の「対策」は、出口を見据えて、そこの始末まで考えて、初めて対策たりうるということであろう。

 ところが、世の中の「節税」対策ナンバーワンである、保険、特に生命保険にはこの種の思慮に欠けた提案が山ほどある。なにせ、彼らの多くは売ればいいのであって、後のことなど知っちゃいないのである。確かに少数の例外はいるが、残念ながら本当に少数である。

 実際、超一流と呼ばれる某都銀の支店内FPの人間が起案したらしい提案書で、役員退職までの年数と保険期間(予定している解約までの年数)が全くマッチしていない素晴らしい代物を見たことがある。あまりにも酷いので支店長にクレームをつけたのだが、蛙の面になんとやらであった。流石昇進する人間は違うよね。

 話がそれてしまったが、本当に最後の最後でトクしているかどうかは誰にも分からない対策は多い。そのことを認識せずして、「何もしないリスクは、何かするリスクより大きいんですよ!」なんて台詞に納得してしまう罪は限りなく重いと私は思うのだが、あなたはどうだろうか。

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