商業登記実務Q&A その2 DES関係(1)
続きである。
主としてDES関係。どうも1回では終らないようである。
まずはこれ。
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Q6 募集株式の発行による変更の登記の添付書面となる商業登記法56条3号
ニの会計帳簿とは、その前提として当該募集株式発行会社が引受人との関係で債
務者である場合に該当するものであると考えてよいか。
A そのとおり。
当該募集株式発行会社の債務として会計帳簿に記載されていない場合、例えば
募集株式引受人が第三債務者に対する債権を現物出資する場合には、商業登記法
56条3号ニに該当しない。
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さて、商業登記法56条3号ニってなんじゃいってみてみると。
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商業登記法
第56条(募集株式の発行による変更の登記)
募集株式(会社法第199条第1項に規定する募集株式をいう。第1号におい
て同じ。)の発行による変更の登記の申請書には、次の書面を添付しなければな
らない。
(略)
◆3 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、次に掲げる書面
(略)
ニ 会社法第207条第9項第5号に掲げる場合には、同号の金銭債権につ
いて記載された会計帳簿
(略)
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さらに会社法にとぶ。
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会社法
第207条【現物出資財産の調査】
9 前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項につ
いては、適用しない。
(略)
◆5 現物出資財産が株式会社に対する金銭債権(弁済期が到来しているもの
に限る。)であって、当該金銭債権について定められた第199条【募集事項の
決定】第1項第3号の価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合
当該金銭債権についての現物出資財産の価額
(略)
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つまり、DESの検査役調査などのスキップ要件である。
何を言っているかといえば、Aさんが、B社に対して債権を持っているときに、
この債権を現物出資するってのが上記のスキップ要件の大前提である。この際に、
B社はAさんへの債務を株式に振替することになるわけだ。
ところが、ここでAさんが、C社に対して持っている債権をB社に現物出資し
ても、これは全然違う話だよと言っているわけである。
混同による消滅が起きないことを考えれば当然なのだが、うっかりする可能性
はあるだろう。
会社法ではこのように手続省略できなくても、逆に、このような第三者宛債権
を使えば、擬似DES状態に持ち込むことは可能になる。すると、18年税制改
正で悩みを生んでくれた債務消滅益課税の問題をクリアできる可能性があるかも
しれない。
擬似DESだって、否認リスク自体がないわけではないけれど、真性DESよ
りはマシだろうと。ま、うかつなことはいえませんけど。
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