「うつろひ蔓」志川節子
オール読物2007年6月号に掲載されている「うつろひ蔓」をようやく読んだ。
作者の志川節子さんは10年以上お会いしていないが、かつての職場での知人である。
S先生から作家として受賞してデビューしたそうだよという話を伺ったのが2年ほど前だったろうか。
その後1つ作品(「しづめる花」)を拝読し、多分これが2つ目になる。Uさんから新作が出たよと聞いて入手したのに、なかなか読めないままになっていた。
吉原花魁であったお蓮は保チ屋の女房として迎えられたものの、どうして夫は自分と結婚してくれたのかを問えず、心を迷わせている。そんな中、ふとした偶然から飛び込んだ賭場で出会った男と過ちを犯し、深みにはまっていくお蓮。半ば自暴自棄になる中で、亭主の気持ちを知り、それでも駆け落ちに身を委ねつつあったお蓮は・・・。
この時代に、かつて苦界に身を委ねた女を描くことで作者が描き出そうとしたものが何であったのか、それは多分、大人の情愛というか情念だったのではないか、そんな気がしている。
そんな情念が書き込まれたこの小説は、作者の志川さんのかつての職場での姿しか知らないものとしては少なからず驚かされる気がする。それほどの情念を持った女性だったのかという感慨に近い思いがある。
しかし、実は、この話の中のお蓮の行動、気持ちが痛いほど分かる気がする自分にもっと驚いている。
人間の気持ちというのは、自分ですら分からない。そんな気持ちになっているからかもしれない。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 「日本人とユダヤ人」(2023.10.20)
- VISION 夢を叶える逆算思考(2023.10.17)
- 数学を使わない数学の講義 その5 第5章 「常識の陥穽」から脱する方法(2023.09.29)
- 数学を使わない数学の講義 その4 第4章 科学における「仮定」の意味(2023.09.28)
- 数学を使わない数学の講義 その3 第3章 矛盾点を明確に掴む法(2023.09.27)
「時代小説」カテゴリの記事
- 資産運用報告書類などの金融機関による棚卸し(2019.01.05)
- 芽吹長屋仕合せ帖 それぞれの刻(2018.07.04)
- 薬屋のひとりごと(2018.04.08)
- 鬼平犯科帳 エンディング曲(2018.01.25)
- 煌(きらり)[志川節子](2017.11.03)
「志川節子」カテゴリの記事
- 芽吹長屋仕合せ帖 それぞれの刻(2018.07.04)
- 煌(きらり)[志川節子](2017.11.03)
- 「花鳥茶屋せせらぎ」(志川節子)発刊(2015.08.28)
- 「結び屋おえん 糸を手繰れば」志川節子(2014.05.21)
- 花鳥茶屋せせらぎ 「一話 山雀の女」志川節子(2013.12.15)
コメント