旬刊 金融法務事情 2008年7月5日号(1839号)
■旬刊 金融法務事情 2008年7月5日号(1839号)
いくつか気になる記事が。
□金融検査 -ダブルスタンダードの憂鬱 [大森泰人(金融庁総務企画局企画課長)]
◆私も歳をとり、役所では個室を与えられているが、現場感覚から乖離しないよう、しばしば喫煙所に行って職員の会話に耳を傾ける。若手検査官から、「机叩いてでかい声出したら、ハケ(破綻懸念先)に落ちたぜ」なんて聞こえてくると、「やれやれ。猿にマシンガン持たせて野に放ってるようなもんだな」とぼやきたくもなる。
◆もとより、業界からダブルスタンダードと受けとられる世界が形成されるのは、私たちの組織管理や人事システムにも構造的な問題があるのだろう。そこが変わるには多少の時間がかかるから、当面は法的拘束力のない検査マニュアルの熟読はほどほどにして、法令に基づき妥当と思われる仕事をすることだ。それが妥当じゃないと検査官からいわれたら、私のこの文章を示して真正面から対峙することだ。そうしない限り、金融検査のレベルもセンスもなかなか高まらない。
△金融庁の現役官僚がこんなことを書くとは前代未聞ではなかろうか。金融検査で頭を悩ましている関係者は今すぐ本屋に走って金融法務事情を買うべきかもしれない。
□銀行業務における期限の利益喪失と相殺実務
-東京地判平19.3.29を素材として- [浜中善彦(弁護士)]
△法的判断は門外漢の私には難しい。ただ、財務分析手法を使って「債権保全を必要とする相当の事由」があったと言えるかどうかを判断しようとしているところが目にとまった。
◆なお、念のため申し添えると、銀行は担保の有無で貸金を実行するか否かを決めるという誤解があるので、その点について簡単に説明しておく。設備資金や長期借入金は原則有担保であるが、その場合でも、担保価値が貸金額を下回る場合もあればそれ以上の場合もある。決算資金等短期の運転資金は無担保が原則である。いずれの場合でも、銀行が貸金を実行するか否かは、収益弁済ができるかどうかが決め手になる。担保に金を貸すのは銀行ではなく質屋である。
△ごもっともというしかない。
□投資信託の共同相続と当然分割 [村田 渉]
◆・・・、最三小判平12.7.11(民集54巻6号1886頁・本誌1594号96頁)は、いわゆる単位株制度の適用のある株式の共有物分割において新たに単位未満株を生じさせる現物分割を命ずることはできないとし、その理由について、分割された株式数が1単位の株式の倍数であるか、またはそれが1単位未満の場合には当該株式数の株券が現存しない限り、1単位未満の株式では株式本来の権利を行使することができず、株式の現物分割の目的を全うすることができないことを挙げていることが注目される。
◆社債については、社振法により、株式より早くペーパーレス化されており、社債を表象するのは「金銭債権」そのものであるといえる。しかし、会社法691条2項は、社債権者の請求による社債原簿への記載変更等の請求は相続人らが共同してしなければならないと定めているから、当然に分割にはならないと解されている。
□決議が不正の方法によって成立したとして、再生計画が認可されなかった事例-最一小決平20.3.13の教訓 [吉田光硯(大阪大学)]
◆民事再生法の立案担当者である深山卓也氏は、「和議の時代に頭数要件を超えられないがために、債権を分割譲渡するという一種の脱法的なやり方がおこなわれた」が、「民事再生法は、非常にスピーディな運用がなされているため、申立て直後に予測を立てて、・・・そんな小細工をするという暇が」ないから、そのような問題はないとの趣旨の発言をしている(ジュリスト増刊「民事再生法逐条研究」193頁)。本件事例は立法時の予測の裏をかくようなものであり、最高裁の今次の判断は妥当であろう。
本事案は議決権の頭数を増大する目的で、回収不能債権を分割して譲り受ける方法がとられたものであり、このように債権者の数が限られている場合に有効な方法であったともいえないことはないが、不良債権を買い叩いて、私的整理に介入する方法は、もともと暴力団等のヤミ勢力の資金稼ぎの手法であり、その手法が法的整理である民事再生手続に利用されたとも評価できる。
他にも下記記事が。
□船舶建造融資と債務不履行発生への対応 [山口伸人]
□信託の登記・登録と取引の安全
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