無法回収 「不良債権ビジネス」の底知れぬ深き闇
●無法回収 「不良債権ビジネス」の底知れぬ深き闇
椎名麻紗枝・今西憲之
講談社 2008年9月25日第1刷発行
著者の椎名氏はかつて読んだ「100万人を破滅させた大銀行の犯罪」の著者で弁護士。
多少、色がついているのかもしれないが、それでも参考になる点はかなりあった。
◆だが、バルクセールで「ひと山いくら」で債権を買ったからといって、税務申告をそのまま行うわけにはいかない。言うまでもなく、債権回収は一件ごとに行うものだからだ。回収できた債権もあれば、回収が不発に終わる債権もある。収支は、それら一件ごとに計上しなければならない。そのためには、一件あたりの「元値」が決まっていなければならないのだ。金融機関が売却価格を教えない本当の理由は、元値を債務者に知られてしまうと、サービサーが法外な取り立てをしにくくなるからだ。(P30)
◆さらに最近では、まとめ売りから個別債権の売買形式に変わってきているという。あるメガバンク幹部は、その背景をこんなふうに説明する。
「これまで、債権がたくさんあったので、『ひと山いくら』でした。しかし、不良債権処理もメドが立ち、債権の数が減ってきた。それに、詳細な資料を作成しているので、『ひと山いくら』より、サービサーを競争させて個々に債権譲渡したほうが、結果的に高い値段がつくのです」
これを業界では「チェリーピック」と呼んでいる。たとえば100件の債権があったとき、その一件ごとに資料をつけて、それぞれ入札させるのだ。後でも触れるが、債務者の個人情報が本人の同意もなくサービサーに開示されることは、個人情報保護法の観点からもきわめて問題ある行為だが、実際には、サービサーは銀行から開示されたこれらの資料をもとに、買い取り価格の値をつけているのが現状である。(P31)
◆しかし、「債権の数が少ないとなると、『レッド』であっても回収に動かざるをえません。これまで、たとえば債権が10あって、そのうち3つ回収すれば仕入れ金額以上になったとします。しかし、個々の債権に値段がつくように変わり、債権1つずつに『いくら取れるか』と考えるようになって、それぞれの回収をあきらめることができなくなった。
ということは、個々の債権に対して、より厳しく取立てるということです。
(略)
(P34)
▲このあたりのサービサー動向の変化はなるほどって感じだった。
◆2006年2月末になって、三井住友銀行はいきなり、根抵当権の元本確定の通知を送りつけてきた。元本確定というのは、当座取引など銀行取引を終了することを意味する。中小企業にとって、当座取引をやめさせられたら、経営はやっていけない。元本確定は、中小企業者にとって「死刑宣告」に等しい。(P50)
▲この点、自分はいままで寝抵当権の元本確定の意味に対して不勉強だったと反省している。
◆「国策会社、RCCがやる裁判で不正があるとはねぇ」
「RCCが原告なんですから……」
一人の裁判官はそう付け加えた。
コーヒータイムの会話とはいえ、ここまでRCCの影響力は大きいものかと、Iさんはびっくり仰天した。おまけに、二人の裁判官は、そもそも被告側の主張についてあまり読んでいないこともその話しぶりからわかった。Iさんがサインや印鑑の真贋について持ち出しても、
「債務者ですから」
と、債務者側は悪いと決めてかかるだけだった。
(略)
法廷を自らの意思で去ったIさんはいま言う。
「私の目は節穴でした」
(P187~188)
▲こんなのを読むと裁判に対する無邪気な信頼は再考すべきだというのがよく分かるだろう。
まぁ「それでもボクはやってない」でみんなわかり始めているのかもしれないが。
◆日本とアメリカとの違いは、アメリカの場合、信用力の低い低所得者向けの住宅ローンであったのに対し、日本の場合、所得は低いが土地などの資産のある人に、住宅などを担保に資金使途自由な大型フリーローンを貸し付けたことだ。いずれも、土地の値上がりを見込んで、返済原資を超えた過剰は融資をしたものだ。
サブプライムローンでは、最初は低い利払いでも、次第に高い利払いになり、最終的には20~30%という高金利になるという。
アメリカでは、不動産バブルの広がりとともに住宅価格が上昇し続け、購入時よりも住宅価格が値上がりする状態が続いていた。そのため、住宅を担保にしてローンを借りた人は、後になるほど金利が高くなるが、ローンを借り換えれば、再度、低い金利から出発できるため、ローンの借り換えをくり返して、結果的に借入額が大きく膨らんだという。このとき、しばしば前述の「略奪的融資」が行われているという。(P314)
▲やはり無知は罪ということなのだろうか。それだけでもないだろうが。
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