親権の考え方
親による子のいじめ・虐待がよく問題になるが、下記の考え方は参考になる。
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「親権」というのは、親としての権利を総称したもので、その中身は、未成年の子供を「教育・監護」する権利であり、いいかえれば、立派な子供を世の中に送り出すために認められる親の権利であるといえよう。具体的には、懲戒権、居所指定権、職業許可権、この財産管理権などが規定されている。そして、これらの親権は、夫婦が共同して行使しなければならないものとされているのである。これを「共同親権の原則」という。つまり、夫や妻が相手を無視しして自分勝手に行使することは許されないのである。さて、「子を叱る権利」すなわち「懲戒権」は親権の中の重要な権利の1つ。あくまでも、社会にとっての良い子を育てるための権利。だから、懲戒権の行使には当然に制約が伴う。まず、親が自分の気まぐれや、見栄や、自己のエゴ満足などのために行使することは許されない。「叱る権利」はその子供の健全な成長のため、社会の有益な構成員をつくるためにこそ認められているものである。お尻をたたいたり、一食を与えなかったり、お説教をしたり。これらは正当な懲戒権の範囲であろう。
(P14~15)
(略)
では、「親権」を有する実父はその子供をいかように取扱っても許されるのか。法律上、親と未成年の子の関係は「親権」の存在につきるといってよい。そこで、「親権」とは何かが問題となる。「親権」を行使せねばならぬのである。だから、「親権」は権利なる名称を有するものの、むしろ、本質は、義務に他ならず、その義務を社会ないし国家に対する義務と考える説(公的義務説)、子に対する義務と考える説(私法義務説)、あるいは、子及び社会に対する義務と考える説(折衷説)等が存在する。つまり、もはや、子は単に親の保護の対象たるにとどまらず、親から独立して人権を享有し自らの権利を自らのために行使する権利主体なのであって、親は、「親権」を行使するにあたっても、この発達状況に応じて子の意思を尊重することが求められている。(P17)
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出典は下記。
「ニュースがわかる法律常識」相馬達雄
朱鷺書房 2005年8月25日第1版第1刷
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