「春はそこまで」志川節子
ついに、志川さんの時代小説本が届いた。
amazonで予約していたので、発売日になったら、すぐに来た。
本作は書きおろしらしい。
今回も、前作「手のひら、ひらひら―江戸吉原七色彩(もよう)」同様、各話の主人公が、次の話に登場して、連なっていくスタイル。
江戸の商店街「春待ち小路」の人々の話が次々と展開していく。
最初の話では、初老が近づいた絵草紙屋のあるじが主人公。思うに、筆者は、男のいやらしさや浅ましさのようなものを、残酷に表現することが少なくない。この話でも、絵草紙屋の主人は、ある意味自業自得とは言え、幾つかの失望を味わわされることになる。
ただ、今回の話は、そこから先、ちょっと前作とは色あいが違う。つまり、彼は幾つかの失望を味わいつつも、その先で、ある種の幸福を味わえるのだ。前作では、女の情念を書き込んだような部分もあったが、今回は、そのあたり、筆を抑えたのかもしれない。
なお、この本全体を通しての主人公は、絵草紙屋のあるじの跡取り息子である。この息子と父親との関係は、本当によく見かける、経営者親子の関係そのものだと思う。
ではあるが、私はどちらかと言えば、父親側に感情移入してしまった。本来息子の立ち位置の筈なのだが、何故だろうか。
久々に堪能できたと思う。
読み終えると、あぁ、また次作を楽しみに待つしかないのですな。
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