家族法最新判例ノート第Ⅱ期 第15回 青竹美佳(月報司法書士2012年9月号)
家族法最新判例ノート第Ⅱ期 第15回 青竹美佳(月報司法書士2012年9月号)
約1年前のものだが。
計算方法に係わるもので、かなり重要なのでメモ。
○特別受益となる生前贈与につき持戻し免除の意思表示がある場合において相続分の指定に対して遺留分減殺請求が行われたときの遺留分額の算定方法(家族法最新判例ノート第Ⅱ期 第15回 青竹美佳)
最高裁判決平成24年1月26日の評釈。
地裁判決・高裁判決を覆して、破棄差し戻ししたものである。
前妻の子3人、後妻、後妻の子2人の計6人が相続人。
評価額の大きい自社株を後妻の子の一人に生前贈与している。
被相続人である夫は、公正証書遺言で前妻の子への相続分をゼロ指定した。
後妻に2分の1、後妻の子2人ぞれぞれ4分の1と指定したわけだ。
で、相続発生後に遺留分減殺請求が起きた。
そこで後妻の子は、生前贈与された自社株の現物分割を求めたとの事案。
評釈者の分析によれば、論点は4つ。
[1]持戻し免除の意思表示のある特別受益が遺留分算定基礎財産に算入されるか
持戻し免除の意思表示は黙示にあるが、遺留分侵害は許されない。
先行する判例に従い、これは明示されたとしている。
[2]各相続人における遺留分負担の方法について
最高裁では、原審の方法を採用せず、遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が、各自の遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正されるものとした。
後妻の子3人の遺留分計3/20を、各自の遺留分割合を超える部分の割合つまり、
後妻:後妻の子:後妻の子
=(指定相続分1/2-遺留分1/4):(指定相続分1/4-遺留分1/20):(指定相続分1/4-遺留分1/20)
=5/20:4/20:4/20
=5:4:4
で負担することになる。
遺留分割合を最低保障と考えると、これは納得できる。
[3]遺留分額の具体的算定方法について
原審では、生前贈与のうち遺留分侵害額のみを加算していたが、最高裁は、生前贈与額全額を遺留分算定の基礎財産に算入した。
なんかこれは当然という感じ。
[4]自社株の現物分割の可否
最高裁判決では出てきていないが、原審判決によれば、代償分割でやむを得ないとされた模様。
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