「私の幸福論」福田恆存
「私の幸福論」福田恆存
タイトルだけ見るとまず買わない類いの本なのですが。
福田氏の本ということで。
「私の幸福論」福田恆存
ちくま文庫 1998年9月24日第1刷発行
中村保夫先生の翻訳本で思い出したわけですが。
お手本として常に名前を挙げられていたのが、福田恆存氏。
福田訳のシェークスピアの翻訳がいかに素晴らしいか。
中村先生は、ことあるたびに、そのことを述べていた。
で、いつか読もうと思いながら。
なんと30年近く経っていたとは(わーいもうジジイだ)。
前置きが長くなりましたが。
超お勧めです。
引用したい箇所が山ほどありますが。
個人的に一番印象的だったのは下記。
△
まえにも書いたことがありますが、戦後の若いひとたちはよく「だまされた」ということばを濫用しました。戦争中、軍人たちに、国粋主義者たちに、町や村の指導者たちに、ことごとくだまされたという。私にいわせれば、理由はかんたんです。人相と人柄との究極的な一致という原理を無視したからにほかなりません。語っている人物の人相より、語られたことばの内容のほうを信じたからにほかなりません。
もっと厳密にいえば、ことばや文章にも、外形的なものと内面的なものとの両面があります。文章にも人相と人柄があるのです。語る調子やリズム、すなわち文体が、その人相にあたり、語られる意味内容が、人格にあたると考えられましょう。もし戦争中、若いひとたちが、ことばや文章の調子や文体という外形的なものから、その真偽を判断する訓練を受けていたなら、戦後になって、「だまされた」などという苦情は出なかったはずです。
(略)
もちろん、私たちは神さまではないのですから、それでも多くの見まちがいをします。それはしかたない。しかし、まちがいに気づいたとき、もう一度、相手の人増を観察してごらんなさい。相手のうちにはじめて発見した不快な欠点も、やはりその人相のうちに現れていることを、改めておもい知るでしょう。
(P30~31「自我について」)
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