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2015/08/11

課税庁職員と税理士のための税務調査における事実認定

課税庁職員と税理士のための税務調査における事実認定


「課税庁職員と税理士のための税務調査における事実認定」
 高松謙悟(税理士)
 清文社 2015年3月27日初版発行

 私が買ったのは、6月5日の3刷版。
 結構売れているってことですね。

 購入した理由は「金融機関(銀行)調査入門」のセクションがあったから。

 預金取引明細で「現金」となっている場合でも。
 臨店して、伝票綴りを確認すれば、前後の時間の入出金なども判明し得る。

 なるほどです。

 伝票や印鑑票の筆跡も確認できるし、金額が大きい場合は必須なのですね。
 届出電話番号で、新たな場所を発見するというのは、恐れ入りました。

 で、銀行取引明細書を見る際のポイントですが。
 貸金庫使用料に注意というのは、有名ですね。

 電気料や火災保険料に注意する、というのは言われれば、でした。
 確かに、場所という属性の情報なのですね。

 「場所」という意識で、情報を見る。
 当たり前のようですが、勉強になりました。

 あと、振込手数料に着目するというのも、やはり言われればです。
 資金移動の徴ですものね。

 で、少なくとも、関与先が入手する情報よりも、はるかに踏み込んだ情報が分かる。
 税理士は、それを前提にして話を進める必要があるわけですね。

 この本で、他に、へーと思ったのは2箇所。

[1]証拠に基づかない「不実認定」は調査ではない(P156)

 願望に負けて、課税をするために証拠を都合良く解釈したり、評価すること。
 これは、事実認定ではなく、「不実認定」というべきだと。

 なるほどです。

 ただ、調査官も、税理士になると「常識」の目が変わることも多いので。
 ここは、そうあって欲しいというレベルでの同意ですが。

[2]税務調査における「暗黙の了解の事実認定」の功罪(P205)

 双方納得いく内容で、早期調査を終了するという共通のベクトルがある。
 そこで妥協の産物として、「真実でない可能性が強い事実認定」が生じると。

 この典型例として、棚卸の計上漏れ問題を挙げている。
 確かに、期首在庫の話は、よく出てきますね。

 で、前からモヤモヤしていたのですが。
 これは、屁理屈でも何でも無いってことなのですね。

 この点が確認できたのは大きい。
 むしろ、当然に主張すべき論点なのだ。

 この本は、調査に立会う税理士には、必読の書物ではないでしょうか。

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