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2015/10/07

「逆転!強敵や逆境に勝てる秘密」マルコム・グラッドウェル

「逆転!強敵や逆境に勝てる秘密」マルコム・グラッドウェル

 在庫切れだったので、Kindle版を購入。


「逆転!強敵や逆境に勝てる秘密」
 マルコム・グラッドウェル
 (訳 藤井留美)
 講談社 2014年10月1日発行

 ダビデとゴリアテの話がプロローグ。

 不利なダビデがゴリアテを倒した話。
 そのような理解は間違いなのだという。

 我々は、有利と不利を取り違えて理解している場合が少なくないと。
 バスケチームの例示などで説明していく。

 個人的に、なるほどと思ったのは、下記。

「裕福な家庭での子育ては、世間が思っている以上に難しい」と彼は言う。「貧すれば鈍すと言うが、富も人をだめにする。野心を失い、自分は価値ある人間だという感覚まで失われる。貧乏でも金持ちでも、極端なのはだめだ。真ん中あたりが一番うまくいくのだろう」。
(第2章 )

 子育ての難易度と富のグラフは、逆U字型になる。
 そして、世界はまさに逆U字型なのだという。

 世の中の有利と不利を取り違えてしまう理由の1つでもある。

 更に、印象派のエピソードを挙げて、2つめの問題を扱う。
 その分野で最も権威ある組織に入ることが、正しい選択なのか。

 大きな池で、小さな魚になるよりも。
 小さな池で、大きな魚になるほうがよい。


 人は全体像のなかに自分を置くことがなかなかできない。「同じ舟」に乗っている人間どうしで比較しあうだけだ。だから自分が恵まれないとか、不幸だといった感覚も、あくまで相対的なものに過ぎない。これはなかなか深い意味を持つ事実であり、不可解に思える現象もすべてそれで説明がつく。

(第3章)

 国別の幸福度調査をして、自分が幸せだと答えた国民の多い国。
 幸せではないと答えた国の、どちらが自殺率が高いか。

 なんと、幸福な国の方なのですね。

 誰もが不幸せな国では、自分が不幸でも落ち込まない。
 しかし、周囲が皆幸福なら、不幸が一層身にしみると。

 著者は、これを「相対的剥奪」と呼んでいる。
 結果、進学先の選択を間違えた理由で行う親や学生が多いと。

 「難関校への進学でセルフイメージが良くなるのは、子どもの親だけですよ」
 確かに、多くの場合は、そうでしょうね。

 そして、優秀な人材を採用したい場合も、この理論は当てはまる。
 専門誌の論文掲載回数調査結果だ。

 「並みの大学の優等生のほうが、一流大学の並みの学生よりも掲載回数は多い」

 なるほど。
 一部のトップ以外には、大きな池が、魚をダメにしたのだ。

 更に、「望ましい困難」について、問題文をわざと読みにくくする。
 その結果、正解率が、元のより上昇したという。

 全て「良い苦労」になるわけではないが。
 時と場合により、不利な障壁が予想外の恩恵をもたらす場合があると。

 アウトサイダーであることが、有利に働くことがある。
 鍵を握るのは、「非調和性」だという。

 自分の殻に閉じこもっていては、革新的なことはできない。
 そして、革新者にはリスク承知で周囲と戦う気概が必要になる。

 話は変わって、爆撃を受けた住民の反応について、精神科医の研究を紹介。
 3つのグループのうち、死ぬ人は除くと。

 ニアミス・グループと、リモートミス・グループに分かれる。
 この2つは、空襲体験の感情が、全く正反対になるという。

 前者は恐怖、後者はどこか不死身感の漂う興奮だという。
 心身に深い傷を残すか、無敵感覚を受け付けるかの違いが生じる。

 そして、神童は恵まれた家庭環境から出てくるが。
 天才は逆境で育つ傾向があるのだと。

 勇気は、リモートミスの体験から生じるのだという。
 事前の危惧と現在の安堵感の落差が、自信に繋がるのだと。

 また、クラス崩壊が、先生の誘導ミスから生じる事例をとりあげる。
 権威の正当性を成り立たせるものは3つあるという。

 【1】権威に従う側に発言権があること
 【2】法の運用に信頼性があること
 【3】権威に公平性があること

 世の賢い親たちは、この3原則を無意識に実践しているという。

 話は変わり、スリー・ストライク法がどうしてできたか。
 迂闊な仮出所で生じた悲劇を再現させないためだった。

 この法律の成立で、犯罪は劇的に減った。
 しかし、逆U字理論が、これに疑問を呈した。

 暴力犯罪は逆に増加しているというのだ。
 このあたりは、価値観もあり、難しいところですが。

 そして、ユダヤ人迫害の時期に、これに抗した町があったという。
 ナチスに取り締まられなかったのは何故かですが。

 1つは、彼らがユグノー教徒であり、祖先の受けた仕打ちを理解していた。
 自分達の受けた迫害の歴史を理解していたから、信念を貫けた。

 これは、お勧めの1冊ですね。

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