租税法の規定における「穴」にどう対応するか
租税法の規定における「穴」にどう対応するか
で、もう1つ、太田発言でメモしておきたいのは下記。
△
太田 今ここで直ちに具体例を挙げるのは難しいのですけれども,租税法の規定自体に「穴」というか,そのような事態が想定されていない場合があります。そのように租税法の規定自体がおよそ想定していない事態が生じたとき,未知の問題が生じたときには,税理士の先生方は,そこで思考停止になってしまうところがあるように思います。
中里 そうですね。
太田 普通に常識ある法律家が法律を適用していけば,形式的には課税要件を充足する可能性があるように思えたとしても,およそ法令が想定していないケースであるので,課税当局も,形式論だけでチャレンジしてくることはないだろうという感覚は,経験を積んだ法律家であれば共有できる部分があると思います。
(ジュリスト2012年9月号「座談会 会社法からみた租税法の意義」P18)
▽
これから2年後のコメントがこれ。
法令の「穴」について、判決文が、明文にない要件を付加したことに対するもの。
「しかしながら,法人税法施行令112条7項5号所定の特定役員引継要件は,同法57条3項に基づき,同項による個別否認の適用を回避するための要件の1つとして設けられたものであって,その意味で,組織再編税制に含まれる個別否認規定の1つである同項の内容を構成している(同項に基づく個別否認を回避するためのセーフ・ハーバーを構成する要件の1つである)のであるから,その解釈に際して一般的な行為計算否認規定が存在することを援用して明文にない限定的な要件を付加することは,個別否認規定の存在意義を失わせるのではないかとの疑問が残る。」
(「ヤフー事件控訴審判決の分析と検討」太田洋 税務弘報2015年3月号 (P33-34))
規定を使って、チャレンジしてきた課税庁がおかしいのか。
穴があるように見えても、制度趣旨を踏まえて処理した裁判所がおかしいのか。
「規定がある以上、発動要件を満たせば、発動するのが当然かもしれない。」
そういう税理士の現場感覚からは、出てこないコメントだとは思いますが。
ま、最高裁判決後に、再度ご本人が何か書かれるでしょう。
楽しみにしています。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 伊丹敬之先生は井尻教授と接点があった_企業会計(2024.11.30)
- 大昔にある税務雑誌の購読を止めた件(2024.10.07)
- 大量閉店「ヴィレヴァン」経営が犯した最大の失敗_東洋経済(2024.10.02)
- 地震を知って震災に備える(平田直)(2024.09.17)
- 私の実家が売れません!_高殿円(2024.09.03)
「税務」カテゴリの記事
- 扶養の範囲と年収の壁_週刊T&A master(2024.12.12)
- 国民案なら減税7.6兆円 「年収の壁」で政府試算_共同通信(2024.11.01)
- 大昔にある税務雑誌の購読を止めた件(2024.10.07)
- 市道として売却したのに市が所有権移転せず…男性に45年課税、訴え無視し差し押さえも_読売新聞(2024.07.11)
- 大企業や富裕層が税金対策に悪用する「ペーパーカンパニー」の所有者を見つけるコツをジャーナリストが解説_Gigazine(2024.04.19)
「法律全般」カテゴリの記事
- 相続した土地100坪もいらないのに手放せない 「ただでいいから使ってほしい…」63歳苦悩 要件厳しい…国が引き取る制度の実態_信濃毎日新聞デジタル(2025.01.17)
- クラウドサービス提供会社に独禁法違反で排除措置命令 公取委_NHK(2024.12.31)
- 放課後デイ利用の中1溺死事故 業過致死罪の支援管理責任者に有罪判決、大阪地裁_産経新聞(2024.12.26)
- 「どう猛な犬は、殺傷能力のある凶器と一緒」闘犬に襲われ一変した生活 問われるモラルと飼育方法…安全に家族として迎え入れるには?_共同通信社(2024.12.24)
- 自転車の歩道と車道の摘み食いを禁止すべき(2024.12.22)
コメント