租税法の規定における「穴」にどう対応するか
租税法の規定における「穴」にどう対応するか
で、もう1つ、太田発言でメモしておきたいのは下記。
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太田 今ここで直ちに具体例を挙げるのは難しいのですけれども,租税法の規定自体に「穴」というか,そのような事態が想定されていない場合があります。そのように租税法の規定自体がおよそ想定していない事態が生じたとき,未知の問題が生じたときには,税理士の先生方は,そこで思考停止になってしまうところがあるように思います。
中里 そうですね。
太田 普通に常識ある法律家が法律を適用していけば,形式的には課税要件を充足する可能性があるように思えたとしても,およそ法令が想定していないケースであるので,課税当局も,形式論だけでチャレンジしてくることはないだろうという感覚は,経験を積んだ法律家であれば共有できる部分があると思います。
(ジュリスト2012年9月号「座談会 会社法からみた租税法の意義」P18)
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これから2年後のコメントがこれ。
法令の「穴」について、判決文が、明文にない要件を付加したことに対するもの。
「しかしながら,法人税法施行令112条7項5号所定の特定役員引継要件は,同法57条3項に基づき,同項による個別否認の適用を回避するための要件の1つとして設けられたものであって,その意味で,組織再編税制に含まれる個別否認規定の1つである同項の内容を構成している(同項に基づく個別否認を回避するためのセーフ・ハーバーを構成する要件の1つである)のであるから,その解釈に際して一般的な行為計算否認規定が存在することを援用して明文にない限定的な要件を付加することは,個別否認規定の存在意義を失わせるのではないかとの疑問が残る。」
(「ヤフー事件控訴審判決の分析と検討」太田洋 税務弘報2015年3月号 (P33-34))
規定を使って、チャレンジしてきた課税庁がおかしいのか。
穴があるように見えても、制度趣旨を踏まえて処理した裁判所がおかしいのか。
「規定がある以上、発動要件を満たせば、発動するのが当然かもしれない。」
そういう税理士の現場感覚からは、出てこないコメントだとは思いますが。
ま、最高裁判決後に、再度ご本人が何か書かれるでしょう。
楽しみにしています。
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