サイロ・エフェクト
サイロ・エフェクト
サイロ・エフェクト
高度専門化社会の罠
ジリアン・テッド(訳:土方奈美)
文藝春秋 2016年2月25日第1刷
原題は、
"The Silo Effect
-The Peril of Expertise and the Promise of Breaking Down Barriers"
これ、巨大化した組織にいる人達が、是非読むべき本です。
特に、日本の大手上場企業の経営者は必読と言って良いでしょう。
もちろん、もっと小さい組織の人間にも意味はありますが。
基本は、顔が見えない規模の関係になった人達向けだと思います。
で、「サイロ」とは、農場にある構造物のことですね。
ソニーでストリンガーCEOが講演した際には、通訳が「たこつぼ」と言い換えたそうですが。
各種の失敗は、誰もが視野狭窄と部族主義にとらわれてしまうことで生じる。
そのことを、著者は幾つかの事例を語って説明していく。
ニューヨークで起きた不法建築に原因する火災事故。
しかし、不法建築を見つけるには、あまりにも数が足りない。
ところが、これが劇的に改善する。
具体的には、全く関係なさそうなデータを繋げて解析した結果ですが。
ただ、何故、そのような状況が生じたのかというと。
そこで、サイロ問題が根底にあったのだと(序章)。
第2章では、ソニーの出井CEOの舵取りの失敗を扱う。
アップルのジョブズと対比しつつ、サイロを作ったことが失敗なのだと。
更に、改革を企図して挫折したストリンガーへのインタビューも。
たぶん、当事者には苦々しい内容なんだろうと思うけど。
そして、スイスのUBSのリスク管理の失敗を第3章で。
これは、非常に衝撃的でした。
つまり、経営者達は、真のリスクの所在をある時期まで知らなかった。
分類ミスを看過するサイロの問題が、ここでも生じていたと。
2008年の金融危機で経済学者達は皆無力だった。
何故と問うたのが、第4章でのエリザベス女王。
数学モデルでの万能感にとらわれ、シャドーバンキングを看過していた。
ここでも分類の問題が登場する。
第5章からは、サイロ問題の解決策の実例が語られていく。
もちろん、現在進行形なので、これで解決というのではなく。
最初が、シカゴ警察で治安を高めるための取り組み。
皮肉にも、途中で中止させられるが、周囲の都市に広がっていると。
第6章は、フェイスブックが、非ソニー化のためにしていること。
簡単に言えば、単一部族にならないような仕組みを入れているのですね。
面白いのは、彼らが150人というダンバー数を気にしているという話。
技術者の数が閾値を超えたことを憂慮していたというのだ。
更に、驚きは、第7章のクリーブランド・クリニック。
なんと、医師・看護師などの呼称を医療提供者に統一。
おまけに、外科や内科の区別もやめ、患者の疾患別に再構成。
流石に医学界から反発を喰らったので、裏設定で残したようですが。
この本、会計士協会や大手監査法人の皆さんに是非読んで頂きたい。
敢えて言いますが、問題の本質はここにあることをまずは理解すべきでしょう。
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