市民不在の企業会計(TSR情報)
市民不在の企業会計(TSR情報)
TSR情報平成28年2月29日(月)より。
○経済を読む
市民不在の企業会計
福山清人
この筆者の知人会計士の話。
彼は、昨今の会計士を戒めていたという。
企業会計の難解さを強調した結果、高報酬化しているが。
会計は、個人投資家や一般市民には理解不能となっていると。
「会計が市民不在の企業経営者寄りになり、IFRSを採用する日本企業は増えている。市民に理解されない会計のままでいいはずがない。」
個人的には、半分賛成で、半分反対という感じですね。
以下私見を書いてみますが。
まず、余りにも安易にグローバル化に迎合した。
この点については、まさに断罪ものだと思います。
幾ら国際的に言われても、理論的に主張すべきは主張すべし。
これができなかったために、みっともない事態が起きた。
代表例が、建設業における工事進行基準です。
当初、完成基準はダメとの流れに抗しきれず、国内企業を泣かせた。
ところが、後で、完成基準が主流の流れになってしまった。
国内企業は当然怒りましたが、「仕方ない」で逃げまくり。
いや、そもそも進行基準はダメだと言い切れなかった時点でダメ。
で、大胆に言えば、持分プーリングだって、復権するかもしれない。
今は確かにダメとされているが、理論的には一理も二理もある。
しかし、理屈で筋を通せる人材が、会計士にはいなかった。
正確に言えば、国際会議で主張しきれる方が不在だった。
その意味で、会計士が周囲を見回せなかったというのは賛成。
隣百姓的発想しかなかったのですね。
ただ、市民に理解されない会計が何故実務になっているか。
そこをこの筆者は理解していない。
端的に、ファイナンスで不利になるからということなのです。
資金調達のためには、市場に評価される会計をやるしかない。
逆に言えば、市場のための会計と、基礎的な会計はもはや別物だ。
そのことをきちんと理解すべきなのだと思います。
そして、その点で日本の会計学者の罪は重いと、敢えて言います。
企業会計原則を放置して、学習者はついていけるのでしょうか。
実務の最先端との距離を学者が意識しつつ。
何を学習者がどのように学ぶべきかの環境を作ること。
それをやらなければ、学者の会計は、実務の後追いしかできない。
あるいは、実務を離れた、社会分析に走るしかない。
是非、日本の会計学者の皆さんの奮起を促したい。
私ごときが言っても、鼻くそではあるのですがね、うん。
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