株式移転があった場合の受取配当益金不算入特例は削除されていた
株式移転があった場合の受取配当益金不算入特例は削除されていた
国税速報2016年6月13日号より。
○疑問相談 法人税
株式移転があった場合における受取配当等の益金不算入額の計算
および所得税額控除に関する留意点
デロイトトーマツ税理士法人 稲見誠一・蝋山竜利
受取配当等の益金不算入計算は、保有期間により制限が生じる。
短期間だけ保有して益金不算入を目指す、不逞の輩を成敗するわけです。
ただ、株式移転で子法人から親法人が受け取る配当について。
通常、期間がフルではとれないわけですが。
最初の配当は、いわば自分から自分へのものなので。
これを救済すべく、特例規定があった。
具体的には、平成27年改正前は、法令22条の3第1項2号に規定があった。
「関係」法人株式等の時代ですね。
ところが、改正後は、これが削除されてしまったのですね。
「関連」法人株式等に定義を変えた際に、特例をなくしてしまった。
そのため、株式移転の最初に受領する配当は、その他株式等に転落する。
負債利子控除は不要だが、益金不算入割合は50%になる。
財務省解説でも、削除したという注意喚起はあるけれど。
理由はきちんと書いてくれていない。
何故なんだろう。
効力発生日廃止に絡む、技術的な問題なのだろうか。
△
このように,関連法人株式等と旧関係法人株式等というのは,そんなに大きくは変わりません。ただし,実はこっそりもう1つだけ違うところがありますので一応ご紹介だけいたします。
株式移転に係る特例のようなものが関係法人株式等にはあったのですが,効力発生日を起点にしていたということもおそらく1つの原因だったのではないかと思われるのですが,その由来はいまひとつはっきりわかりません。もともとは銀行持株会社制度ができたときに改正前と類似の規定ができまして,それが徐々に商法で持株会社が可能になって株式移転が導入されていったときに,それに合わせて一般的な制度っぽくなったものです。どうも株式移転に対する政策的意図が若干あったのではないかということもありまして,この株式移転の場合の配当を受ける株式移転完全親法人のときに6カ月未満で良いように調整しているのですが,その受け取り側が新設法人である他の場合には全く何の調整規定もありませんので,バランスが悪いということもありまして,今回廃止してしまいました。そこだけご留意いただければと思います。
基準日に今回しましたのので,4月1日というか,切りのいいところで株式移転をする方が多いのかなということも考えて,この規定がなければどうしても困るということもそんなにないであろうということで,バランスの悪い制度ということで廃止させていただいているということです。これは政令改正でこっそりとなくなっています。
「平成27年度法人税関係(含む政省令事項)の改正について」財務省主税局税制第三課課長補佐藤田泰弘(租税研究2015年7月号)
▽
「この規定がなければどうしても困るということもそんなにないであろう」
……うーん、そうでしょうか。
知らずに墓穴を掘る人が出そうな予感。
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コメント
丁重なリプライありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: アルキメデス | 2016/06/25 13:51
アルキメデスさん、はじめまして。
このブログは、主として覚え書きなので、そういう目で見て貰えれば嬉しいです。
個人的には、著者の方に怒られないかなと思いつつですので、まぁ、そのあたりご配慮頂けると幸いです。
そのような趣旨で、先ほど、第7回についての覚え書きを入れました。
投稿: はまちゃん | 2016/06/25 10:14
はじめまして。はまちゃんさんのブログをいつも楽しく読ませて戴いておりますアルキメデスと申します。突然のご無礼お許しください。
とりわけ、「月刊税理」に連載中の、岡口基一「ゼロからマスターする要件事実」の紹介エントリを、これまでの6回分、大変興味深く読ませていただきましたが、
6/22発売の7月号にも、「第7回 要件事実の全体像」が掲載されているようですね。
もしご迷惑でなければ、お手透きのときにでも、第7回の紹介エントリをアップしていただけないでしょうか?
ご高配のほどよろしくお願いいたします。
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投稿: アルキメデス | 2016/06/25 04:46