信託法と相続法(沖野眞巳)その3
信託法と相続法(沖野眞巳)その3
「相続法の立法的課題」(水野紀子編著 有斐閣2016年2月25日初版第1刷発行)より。
〇信託法と相続法
-同時存在の原則、遺言事項、遺留分
沖野眞巳(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
続きで、[1]相続財産の帰属主体の継続性の保障 です。
…… 被相続人からの財産承継において帰属主体が存しない
無主の財産を一瞬でも作り出さないという要請
これが、同時存在の原則の意義として、最も一般的だと。
しかし、これは信託の場合は、問題にならないだろうと。
無主の状況を作り出しませんから。
次に、[2]法律行為の効力発生時に未存在の者への権利の付与 です。
…… 被相続人の死亡時に未存在の者は権利を取得しない
という帰結
信託法91条が、同時存在の原則違反と言われているのは。
この[2]の点であると。
権利あるいは権利取得の発生原因である法律行為の効力発生時に。
未だ存在していない者に、受益者としての権利や地位が付与される。
しかし、これは相続法固有の問題ではないと。
権利能力の派生命題なのだと。
信託の場合、未存在や不特定者を受益者とすることも可能だし。
効力発生時に現に受益者が存しない信託の設定も可能である。
ここで、委託者が最初の孫を受益者とする信託を設定した場合。
一見すると、受益権が未存在者に付与されているかに見える。
しかし、受益者が存在することが、受益権発生の停止条件だと。
そう理解するならば、受益権は帰属主体空席にはなってない。
そうですね。
有効な権利になってないのだから、空席の議論はナンセンス。
すると、[1][2]両方の意味で、信託は同時存在の原則と抵触しない。
これは、ちょっと驚きました。
続きます。
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