要件事実と立証責任その2(ゼロからマスターする要件事実)
要件事実と立証責任その2(ゼロからマスターする要件事実)
〇ゼロからマスターする要件事実
第15回 要件事実と立証責任
岡口基一(東京高等裁判所判事)
続きです。
立証負担の転換により、請求原因の要件事実は、請求権の発生原因と同じになるとは限らない。
その例示として、商品購入時の配送遅れによる損害賠償を挙げます。
当然、履行遅滞は、損害賠償請求権の発生原因事実になる。
しかし、原告に履行遅滞事実を証明させるのは「悪魔の証明」になってしまう。
期限内履行が「なかったこと」を証明するのは無理。
だからこそ、これは、一般に「悪魔の証明」と呼ばれているわけです。
そこで、この場合は、公平性から、立証負担を逆転させているのだと。
被告側で、期限内履行を立証すべき、とされているのですね。
これは、理屈上の話だが、立証負担の逆転が法定されている場合もある。
無権代理人の責任追及時に、被告は無権代理人だと原告が証明する必要はない。
△
・民法 第117条(無権代理人の責任)
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。
▽
なるほど、被告は自分に代理権があることを立証すべきとされている。
他にも法律上の推定・暫定事実などの法理論も存在しているのだと。
ということで、法律要件分類説の考え方は大事でも、万能ではないよねと。
続きます。
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