民法が裁判規範であることの生き証人(ゼロからマスターする要件事実 第17回)
民法が裁判規範であることの生き証人(ゼロからマスターする要件事実 第17回)
○ゼロからマスターする要件事実
第17回 民法が裁判規範であることの生き証人
岡口基一(東京高等裁判所判事)
この連載が終わったら、「税理」は定期購読を止めようかと思っているのですが。
連載、まだ、暫く続く雰囲気ですね。
で、今回は、裁判規範としての民法つまり裁判規範性についてのお話。
まず、誤解が多いが、民法は生活行動準則としての行為規範ではないのだと。
あくまでも、法律要件と法律効果としての条文から成る裁判規範なのだと。
その視点からは、法律効果の発生は、現実の行為時点ではないのだと。
ここでは「法律効果の仮象があるにすぎない」と言っています。
裁判で、法律要件に該当する主要事実の主張立証で初めて発生するのだと。
へー、初めて読む話です。
ただ、言われてみると、これって、税務申告でも似た話がありますね。
不動産を譲渡して譲渡所得の課税要件は充たしても、申告までは「確定」しない。
もちろん、未確定でも生じているので、申告行為がなかったとしても。
職権で更正できるので、こちらは、生じていないまでは通常言えませんが。
で、元の話に戻ると。
民法の理解を行為規範とするのか、裁判規範とするのかで、解釈の違いを生じると。
その最たるものが、民法の法律要件には規範的評価を伴うものがある点だと。
例えば、正当な理由というのは、裁判における裁判官の評価により生じるのだと。
規範的要件は、民法が裁判規範であることの生き証人と言うべきものだと。
なるほど、確かに、裁判という局面で機能することがメインですね。
予防法学的に考えることは、あくまでも反射的効果に過ぎない。
その意味で、裁判規範として考えないと、民法は十全に機能しないのですね。
評価要素のない事実要件ばかり見ていると、ここを見落とすよと。
ちなみに、昔、内田貴教授が何かで書いていたことですが。
法律は、どの裁判官が判断しても、同じ材料が与えられれば。
常に、同じ結論を出すことを目指しているのだと。
つまり、裁判プログラムとしての法律ということですね。
民法も、当然、その1つだというに過ぎない。
私なら、そう位置付けますが。
更に、次回、規範的要件の特殊性について解説するとのこと。
楽しみにしておきます。
なお、途中、民法が歴史的に訴訟法と未分離だった時代があると付言してあります。
現在の民法の時効援用や占有訴権などは、純粋な実体法として見ると疑問だと。
確かに、そうですね。
市民法としての歴史を引き摺る以上、やむを得ないのだとは思いますが。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ローズマリー・バトラー_光の天使 (2025.09.07)
- AIボットだけのSNSで生じた事態は人間社会と同じだった_BUSINESS INSIDER(2025.09.05)
- 大学生に四則演算を教える理由(芳沢光雄教授)_朝日新聞(2025.08.10)
- 無書店自治体になる手前だった庄原市に書店を出す勝算は(佐藤友則氏)_HOME広島(2025.06.13)
- 内田民法総則改訂がもうじき発刊らしい(2025.05.09)
「税務」カテゴリの記事
- 暴露とはなにか (2025.11.08)
- 吉備中央町が苦渋の選択をした理由は_読売新聞(2025.05.08)
- NISAより先にiDeCoを検討すべき理由は_野村證券(2025.03.24)
- 私が脱税!? 父の教訓、身辺整理はしっかりと 相続税に苦戦 森永卓郎さんが残した言葉_産経新聞(2025.02.11)
- マンション修繕費4700万円を自分の口座に移動させ横領 元社員逮捕 総額9億円被害か_産経新聞(2025.01.30)
「法律全般」カテゴリの記事
- 接道義務違反をクリアできる手法があるのか_アゴラ 言論プラットフォーム (2025.11.12)
- 東京にまた地面師_読売新聞(2025.11.10)
- 退職代行会社が非弁提携か_読売新聞 (2025.10.26)
- 見限られた「論破系」新人 解雇無効訴訟_日本経済新聞 (2025.10.19)


コメント
丁重なリブライありがとうございます
今後とも宜しくお願いします
投稿: パスカル | 2017/04/26 02:22