「総合型」の規範的要件(ゼロからマスターする要件事実)
「総合型」の規範的要件(ゼロからマスターする要件事実)
〇ゼロからマスターする要件事実
第19回 「総合型」の規範的要件
岡口基一(東京高等裁判所判事)
規範的要件とは、裁判官の規範的判断が必要な要件で。
典型例は、不法行為の要件である「過失」だ。
交通事件で、速度出し過ぎで、急ブレーキが間に合わず。
歩行者をはねた場合、運転者に過失ありとされるのが通常だ。
ただし、法定速度を上回る速度なら常に過失ありとはならない。
世間では、法定速度が厳格に遵守されているわけではないから。
この規範的要件には、2つの類型があると。
【1】多様型
単一ないし複数の事実につき要件該当性を評価するもの
事実要件の考え方の延長線上で理解が可能。
【2】総合型
様々な事情を総合的に考慮することで要件の具備
あるいは不具備を判断するもの
当てはまる具体的事実を考えるアプローチは困難。
借家契約等を終了させる「正当な事由」は、【2】の例。
賃貸人側の事情と借家人側の事情を総合的に考慮して判断される。
他に、表見代理の成立要件の「正統な理由」(民110)や。
背信的悪意者論における「背信性」も同様だと。
で、総合型の場合は、要件事実のような手法が使えないので。
どうやって裁判所は判断するかとなるのですが。
なんと、当事者が主張していない事情でも、証拠から判断できると。
弁論主義の例外として位置づけられるというのですね。
更に、立証責任も適用されない場合が出てくると。
民事訴訟の基本原理が通用しない場合が出てくるのだと。
さて、特別だから違うと言えば済むわけでなく、実務ではどうするか。
司法研修所民事裁判室は、ルール作成のため奮闘したが。
実務の扱いと異なるものを作り出したのだと。
というところで、次回は、先に実務の扱いを確認するのだそうです。
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コメント
丁重なリプライありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: パスカル | 2017/06/26 00:27