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2017/07/29

融通無碍な実務と、それと対照的な学者の深い悩み(ゼロからマスターする要件事実)その3 総合型の規範的要件を学者がアドホック処理している理由

融通無碍な実務と、それと対照的な学者の深い悩み(ゼロからマスターする要件事実)その3 総合型の規範的要件を学者がアドホック処理している理由

 月刊「税理」2017年8月号(ぎょうせい)より。

〇ゼロからマスターする要件事実
 第20回 融通無碍な実務と、それと対照的な学者の深い悩み
 岡口基一(東京高等裁判所判事)

 続きます。

 先の借地借家法28条の「正当な事由」を前提にしての説明です。

 総合型の規範的要件を、学者が特殊な要件とするのは何故か。
 大きく、2つの問題点がクリアできないから。

[1]「当事者が主張していない事実をも総合考慮の対象とすることができるかという弁論主義との関係での問題」

[2]「被告が、自己に有利な事実を主張立証した場合、それは、抗弁になるのか、請求原因の否認になるのか、それとも、それ以外のものになるのかという、被告に有利な事実のブロックダイアグラム上の位置づけ」

 しかし、ともに、実務では悩む必要がないのだと。

 実務では、[1]は総合考慮の対象とする。
 使い勝手の良さが理屈に優先するので、否応なし。

 また、[2]も、実務は、要件事実の「親ルール」に従うと。

 なら、「正当な事由」を主張すべき、原告に有利な事実は請求原因で。
 被告が立証すべき、被告に有利な事実は抗弁になるのだと。

 やはり、悩むまでもないわけですね。

 更に、多様型が、統合型と扱いを区別されているかというと。
 実務では、区別されずに扱っているのだと。

 どちらでも、原告が評価根拠事実を立証して。
 被告が評価障害事実を立証することにしている。

 ただ、多様型なら評価障害事実がないことになるが。
 その場合、被告の主張立証がなかっただけとして処理する。

 ま、確かにわかりやすいですね。
 実務処理は簡明が一番ですから、わざわざ無用の複雑化する動機がない。

 ということで、このような類型の峻別は進んでいない。

 このような実務と理屈上の悩みについて、どう考えるべきか。
 次号では、司法研修所民事裁判教官室の考えを詳説するそうです。

 んー、要件事実論というホームベースと実務処理の距離について。
 整理を付けておかないと困るというのは、分かります。

 ただ、そのことがどういう含意を持ってくるのか。
 そのあたりがまだ見えませんので、次回に期待したいですね。

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