【個人・法人/地主・借地人】の取引主体で解きほぐす借地権の税務判断
【個人・法人/地主・借地人】の取引主体で解きほぐす借地権の税務判断
「【個人・法人/地主・借地人】の取引主体で解きほぐす借地権の税務判断」小林磨寿美
清文社 平成29年8月3日初版発行
小林磨寿美先生の新作です。
正直、「今更借地権ですかぁ」と思ったのは、私の早計、お許しを。
ざっくり拾い読みしたのですが。
例によって、確かな裁決・判例分析が冴えまくりです。
土地の無償返還に関する届出書の、本来の意味は何か(P54-56)。
大阪地裁平成11年1月29日判決で説明される(第2章 借地権設定時の課税関係)。
なるほど。
そもそも契約当事者間効力で有効という前提が、この結論を導くのですね。
借地契約の無意識の更改(P104-105)。
今まで、全く意識したことがない論点でした(第3章 借地権設定中の課税関係)。
相続における法定承認みたいなイメージでしょうか。
相当の地代方式を理由なく増減させると、権利金認定が発動って怖すぎ。
相続贈与後の引継ぎ(P112-113)。
これをわざわざ扱ったところが、実務家という感じ(第4章 借地権の移動等)。
単に教科書的に体系的記述をしているかのように見せかけて。
実務的な示唆がちりばめてあるのが、磨寿美印というべきか。
あ、時にきっつーい皮肉も入ってたりしますね。
余計を嫌うので、表現を殺してあり、裏読みしないと分からなかったりしますが。
平成22年7月9日裁決は、借地権の無償返還事例(P210-213)。
恐らく、世の中では、結構悩ましい事例ですね(第5章 賃貸借等の終了)。
小林先生の整理は、民法上の借地権は消滅していないものの。
財産価値が存在しなくなり、無償返還が認められた事例だろうと。
ただし、それは借地人にとっての話であり。
地主にとっては、また別の判断が生じる可能性があるよと。
なるほど、この理解がスッキリしますね。
まさに「複雑な実務をスッキリ解説!」
ということで、
「借地権の設定から契約終了までの課税関係、民法上の使用貸借や定期借地権への税務対応を豊富な裁判例・裁決例で読み解く!」
これは全く誇張でも何でもないと。
小林磨寿美先生のファンでも、そうない方も是非と申し上げておきます。
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