嘲笑された「司法研修所民事裁判官室説」(ゼロからマスターする要件事実)
嘲笑された「司法研修所民事裁判官室説」(ゼロからマスターする要件事実)
〇ゼロからマスターする要件事実
第22回 嘲笑された「司法研修所民事裁判官室説」
岡口基一(東京高等裁判所判事)
1)前回の復習と今回の話の前振り
借家明渡訴訟で、原告が立証する根拠事実は。
明渡しの正当事由があると評価されるものであり。
被告が立証するのは、その評価を障害する事実であり。
裁判所は、これら事実を総合考慮して、正当事由の有無を判断する。
このような総合型の規範的要件の位置づけについて。
学者は、どう位置づけているかというと。
通常の事実要件の具備判断方法と異なっていることから。
特別な要件だと、割り切っているという話が前回。
で、今回は、司法研修所民事裁判官室のアプローチについて。
学者の整理とは、異なる整理をしているその中身を語るわけですね。
2)実務家にも学者にも相手にされていない司法研修所説の中身
結論から書くと、著者は司法研修所説をボロクソに言ってます。
・理論的に雑
・机上の空論
・全く考慮するに値しない
・恥
・実務家の嘲笑を買った
・全く説明できない理論構成
・司法研修所の考えることはこの程度
あ、最後は新堂教授の言葉を、著者が勝手に忖度したものですが。
さて、司法研修所説は、一体どういう内容なのかですが。
要は、総合型の規範的要件も、通常の事実要件と同様に扱うと。
実務では、どちらも「要件事実」とされているので。
「あてはまる事実」と「規範的評価の根拠となる事実」も同様だと。
その際に、総合型の規範的要件の評価根拠事実について。
事実要件と同様に、主要事実と位置づけることにしたのだと。
ここで、評価根拠事実の方は、請求原因の「具体的事実」という点で。
共通性を見いだし得るので、良かったけれど。
評価障害事実の方は、それができない。
悩んだあげく、被告が立証するからと、抗弁の要件事実としたのだと。
先の借家明渡訴訟の場合、「正当な事由」が問われるわけですが。
評価根拠事実が要件事実で、評価障害事実はその抗弁の要件事実だと。
3)評価障害事由が請求原因という枠を超えてしまうとの理論崩壊
確かに、実務では、評価根拠事実が原告の立証する事実であり。
評価障害事実は、被告の立証する事実とされているけれど。
それだからと言って、評価障害事実を抗弁とする整理は無理だ。
著者が一番言いたいのは、ここなのでしょうね。
「正当な事由」が請求原因の構成要件であるからと言って。
評価障害事実だけが、独立して抗弁になるってあり得ないだろうと。
あくまでも、請求原因という枠が存在するわけであり。
その一部に対応するだけなのに、何故急に同格になっちゃうの。
対応関係という意味で、論理崩壊しているんじゃないのと。
著者はそこまで書いていませんが、恐らくそういう意味なのでしょう。
4)研修所説の理論崩壊の根っこにある誤解
司法研修所は、主要事実と、要件事実との差異を区別できていないと。
だから、
・評価根拠事実=原告の要件事実=請求原因の要件事実
・評価障害事実=被告の要件事実=抗弁の主要事実
という、無理な単純化を行ってしまったのだと。
何故これが問題なのかというと、前回の話で、ちらっと出ていました。
主要事実なら弁論主義の制限が及ぶ筈ですよね、との話なのですね。
主要事実だと言いながら、主張されない事実が考慮できないと。
それって、おかしいですよねと。
ここらを踏まえて、次回は主要事実と要件事実との関係を整理すると。
だとすると、ここ3回ほどは、寄り道の回だったんでしょうね。
なお、最近、原文は、小見出しが完全に消失してしまって。
パラグラフの中身が、あちこち入り組んでいる気がしますので。
私の方で、勝手に一部組み替えして、勝手な補充入れました。
そもそも、これ、私のためのメモとの位置づけなので、御容赦下さい。
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