刑法学者はテロ行為への有効は枠組みを出せないままなのか
刑法学者はテロ行為への有効は枠組みを出せないままなのか
正直、刑法は学ぼうとしてテキスト見て挫折しました。
もう、全然さっぱりで。
だから、私の理解が不十分だろうと。
それを認識しつつ、敢えての疑問提示ですが。
最近、初心者向けと思しきテキスト読んでみたのですが。
なんか、最初の方で違和感を感じました。
△
結局、刑法は、その出発点で常識的なものであるが、同時にその出発点が人の感情の問題であるだけに、その根源において非常に不安定なものを持っており、ある場面、ある時期あるいはある者の感情によって動かされるようなことがあったときは、制裁が最も厳しいものであるため、たいへん危険な存在となるし、また、政治的な濫用が起こりやすいことは過去の歴史が示している。
そこで、ある特定の場面から見れば、「悪い者」を見逃すこととなるような非常識と思われる結論になることがあっても、長い目で、かつ、広い範囲で見れば、大きな弊害が起こらないこととすることが必要であると考えるのが、歴史の教訓に基づく人間の理性的な判断として、刑法の常識となっているのである。
「刑法という法律〔改訂版〕」古田佑紀
独立行政法人国立印刷局 平成17年4月1日改訂版発行
P8-9
▽
市民生活の話が前提なら分かる。
しかし、現代社会という視点からだと、疑問が湧く。
「あれ、これってテロ行為にはどういう考え方をするのだろう」
つまり、今の刑法学者の語る刑法理論って。
テロ行為が世界に蔓延する以前のものなのではないかと感じた次第。
で、その後も、いろいろネットで検索してみたが。
真正面から語るものは見つからなかったわけで。
ただ、下記を読んで、なんか納得してしまったのです。
△
4. 日本は組織犯罪も含めた犯罪情勢を改善してきており、治安の悪い国のまねをする必要はありません。
公式統計によれば、組織犯罪を含む日本の過去15年間の犯罪情勢は大きく改善されています。日本は依然として世界で最も治安の良い国の1つであり、膨大な数の共謀罪を創設しなければならないような状況にはありません。今後犯罪情勢が変化するかもしれませんが、具体的な事実をふまえなければ、どのような対応が有効かつ適切なのかも吟味できないはずです。具体的な必要性もないのに、条約締結を口実として非常に多くの犯罪類型を一気に増やすべきではありません。
そればかりでなく、広範囲にわたる「共謀罪」の新設は、内心や思想ではなく行為を処罰するとする行為主義、現実的結果を発生させた既遂の処罰が原則であって既遂に至らない未遂・予備の処罰は例外であること、処罰が真に必要な場合に市民の自由を過度に脅かさない範囲でのみ処罰が許されることなどの、日本の刑事司法と刑法理論の伝統を破壊してしまうものです。
共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明(2017年2月1日)
http://www.kt.rim.or.jp/~k-taka/kyobozai.html
▽
たぶん、これが本音なんですね。
あぁ、この人達は、今そこにある危機に向き合えない人たちなのだ。
従来から自分たちが信奉してきた理論が、瓦解するかもしれないから。
日本のことだから、日本だけ考えればよい。
上記は、暗黙裏にそのような前提が置かれています。
だから、国民の平和と安寧が守られないとしても。
「日本の刑事司法と刑法理論の伝統を破壊してしまう」ことを恐れる。
ここに名前を連ねた学者の方々って、そういう人たちですよね。
もしそうでないのなら、テロへの刑法の向き合い方をまずは示すべき。
私の拙い理解では、たぶん、できないのですね。
それは現在の学問としての刑法の基本を大きく揺らがせるから。
最近、理屈倒れの学者が増えたなと実感します。
皆さん、マスコミ出演が象牙の塔の住人でない証明と勘違いしていませんか。
いや、まじめな話、現実に向き合う刑法理論って。
誰か提示していないのでしょうか。
で、共謀罪に賛成の立場という多分希少な刑法学者がおられました。
著書も多い、井田教授です。
下記を読む限り、なるほどです。
一般市民のための刑法で組織犯罪を扱うことが、そもそも間違いなのだと。
△
■井田良・中央大院教授
異例の採決は残念だが、一面的な議論や現実離れの抽象論ばかりで、出口が見えない中でやむをえない面もあった。
犯罪発生前の早い段階で処罰する「処罰の早期化」は全世界で進んでいる。
組織犯罪には一般市民の刑法とは違う原理が当てはまることは、もはや否定できない。特殊な原理が、一般社会を侵食しないよう囲い込むことが重要だ。その点、「共謀罪」は囲い込む工夫がされている。
(略)
「共謀罪」でなく、現行の予備罪で十分という意見もあるが、無責任。国際組織犯罪防止条約が、共謀罪か、犯罪集団に加わることを罰する「参加罪」を求めている意味を軽視すべきでない。予備罪は法定刑が比較的軽い点も、組織犯罪防止の観点からは不十分だ。
反対派の言う「刑法の一大転換」という表現は認識不足だ。国内でも、90年代ごろからサイバー犯罪や経済犯罪を中心に処罰の早期化は広く見られる。
諸外国は、処罰の早期化をもっと進めている。日本の法律の「先生」であるドイツは、参加罪の処罰対象が幅広いが、監視社会だと聞いたことはない。この程度の早期化でうろたえている日本は、法治国家と言えるのだろうか。(聞き手 後藤遼太)
井田教授の最近書かれたものを探して読んでみたいと思います。
私の求める答えが、あるのかもしれない。
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