裁判官!当職そこが知りたかったのです。-民事訴訟がはかどる本-
裁判官!当職そこが知りたかったのです。-民事訴訟がはかどる本-
裁判官!当職そこが知りたかったのです。-民事訴訟がはかどる本-
岡口基一(裁判官)・中村真(弁護士)
学陽書房 2017年12月18日初版発行
私が買ったのは、2018年1月5日の2刷です。
気になってはいたものの、どうしようかと思い悩んでました。
何せ、私は弁護士でも裁判官でもない法務素人ですし。
でも、中村真弁護士のマンガは読みたいよなぁと(おいおい)。
で、結局、梅田の紀伊國屋書店でついに買ってしまいました。
(私の前に、手に取った人は買わなかったのに……)
私みたいな裁判素人でも案外読めて、なるほどが結構ありました。
特に「04 和解」の箇所。
まず、相手にカネがない場合の和解について。
総額を負ける和解ではなく、分割払いの期間を長くとると。
その際に、分割は2回怠りで期限の利益喪失との条項を付ける。
債務者側はOK出すけど、債権者側は渋る場合が多い。
しかし、2回怠りで請求額全額の債務名義がとれるのだから。
確定判決よりも早く債務名義がとれるので、債権者も有利。
うーん、そうなんだ。
確かに、判決だけでは役に立たないということを踏まえた解決だ。
債務者は騙されたような気がしないのかなと思ったりしますが。
まぁ、仕方ないんでしょうね。
それから、和解7割という秘訣は何かという話で。
人間関係を作る、代理人の信頼を得るということに加えて。
代理人に議論を求められても、言い負けないようにすると。
そのために、記録をちゃんと読んで入念に準備しておくと。
この点は「05 審理の終結」でも出てきます。
和解させるにも、判決起案と同じくらい記録をちゃんと読むのだと。
あと、「05 審理の終結」で、最終準備書面が有用な場合の話があり。
反対の間接証拠を全部潰せるよう、書いてきてくれると助かると。
あくまでも、直接証拠がなくて、結論が悩ましい事件の場合だが。
反対証拠を説得的に潰せるものは、とても有り難いと。
最終準備書面は、通常局面では出す必要ない存在のようですが。
なるほど、こういう使い方をすると有用なのですね。
これって、個人的にはとても参考になりました。
法曹じゃなくても、仕事上作成するある種の文書で応用できそうだなと。
また、「06 判決」では代理人の腕の善し悪しと判決の影響で。
良い代理人は証拠の出し方も上手いし、途中段階でも差が付くので。
最終結果としての判決で影響が出るのは「しょうがない」と。
現役裁判官が言っちゃうのは、結構衝撃です。
で、この本で一番衝撃的だったのは、「07 控訴」のところ。
控訴の趣旨は、「ほとんど間違えています」なのだそうです。
もっと言えば「間違っていないことがあまりない」。
これは、代理人弁護士の皆さんには、恐らくウゲゲではないか。
聞けばコロンブスの卵ですが。
「自分が勝った部分は原判決を取り消さなくてもいい」なのに。
「自分が勝ったところを含めて全部取り消せと言っている」と。
うーん、しかし、この話って怖すぎますね。
「私の場合、原判決は間違っているという視点で読む」も軽く驚きでした。
筋を外している原判決でも、国語的はよくて、一見良い判決に見えると。
なので、最初の「事案の概要」を読んだら、原判決の続きを読まずに。
双方から出ている代表的な陳述書を読んで、筋をつかむと。
その上で、原判決の理由を読むと、まるっきり違っていることもあると。
「事件の筋を外している原判決では全然お話にならない」と。
そして、「08 裁判所から見た内外のお仕事事情」では。
裁判官に信頼されている代理人とはどういうものかとの話があり。
「この先生だったらそう間違ってないだろう」があると。
知らない人の場合は、ちゃんと慎重に読むと。
そして、内容素晴らしいと「ちゃんとした先生なんだな」と思うし。
ダメな書面だと「この先生はダメなんだな」みたいに思うと。
この点(「ひどい先生のとき」)は、引継メモのところでも出てきます。
「この先生は何回言っても準備してこないので、ちょっと注意して進めてください」など。
あと、やりやすい代理人はどういう人かという話もあり。
紛争の全体像が把握できている人、ということが出てきますが。
そこで、依頼者を説得できない弁護士の話が出てきます。
最近、この話は、よく聞きますけれど。
たぶん、私のいる業界も、似たような話ってあるだろうなと。
シミジミ感じました。
私ですら、なかなか面白く読めましたので。
多分、法曹の方々であれば、更に得るところの多い本なのでしょう。
なお、最後の方で、著者たちが出版社で撮影された写真があるのですが。
それを見て私が思ったことは。
「中村弁護士の顔って、マンガと全然ちゃうやん!」でした。
岡口裁判官は、まぁ似ているような気がすると言っておきましょう。
まぁ、中村先生のマンガの面白さは画力じゃないし(褒めてないか)。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 伊丹敬之先生は井尻教授と接点があった_企業会計(2024.11.30)
- 大昔にある税務雑誌の購読を止めた件(2024.10.07)
- 大量閉店「ヴィレヴァン」経営が犯した最大の失敗_東洋経済(2024.10.02)
- 地震を知って震災に備える(平田直)(2024.09.17)
- 私の実家が売れません!_高殿円(2024.09.03)
「法律全般」カテゴリの記事
- 相続した土地100坪もいらないのに手放せない 「ただでいいから使ってほしい…」63歳苦悩 要件厳しい…国が引き取る制度の実態_信濃毎日新聞デジタル(2025.01.17)
- クラウドサービス提供会社に独禁法違反で排除措置命令 公取委_NHK(2024.12.31)
- 放課後デイ利用の中1溺死事故 業過致死罪の支援管理責任者に有罪判決、大阪地裁_産経新聞(2024.12.26)
- 「どう猛な犬は、殺傷能力のある凶器と一緒」闘犬に襲われ一変した生活 問われるモラルと飼育方法…安全に家族として迎え入れるには?_共同通信社(2024.12.24)
- 自転車の歩道と車道の摘み食いを禁止すべき(2024.12.22)
コメント