子どものまま中年化する若者たち
子どものまま中年化する若者たち
子どものまま中年化する若者たち
根拠なき万能感とあきらめの心理
鍋田恭孝(医学博士・臨床心理士・欧州共同認定サイコセラピスト)
幻冬舎 2015年7月30日第1刷発行
著者は、精神科臨床30年の現場経験のある医師。
今の若者には、明らかに大きな変化が起きていると。
以前買って読み途中でそのままになっていました。
年末大掃除で見つけて、ようやく続きを読んだわけです。
まず、大まかにいえば、若者は体力的にも植物化が進行し。
省エネ的な、動物らしさが失われつつあると。
そして、遠近法などの統合的な事象の把握能力が未発達だと。
断片的にものごとや他者を認知する可能性が高くなっていると。
著者は、これらをデータや各種の調査で語るわけですが。
これらの性質は、キレやすさに繋がるだろうと予想している。
では、現象ではなく、どうすればという話ですが。
今回読んだ部分に答えがあった気がします。
人の気持ちを読む能力を育てる訓練をすること・させること。
これが何より大事ですね。
やらなきゃ、いつまでたってもできない。
かつては、勉強ができれば、かなりの程度、これも期待できた。
しかし、今はそこに相関性がない。
むしろ、結果としては逆であることが増えている。
以下は、私が気になった部分のメモです。
P167
家庭でも学校でも、至れり尽くせりで育てられる。大学まではずっと「お客さん」だ。そのため、社会に出ても、自己愛を引きずることが多い。新型うつ病に見られるような漠然たる自己愛だ。そして、何の根拠もない幼児的な万能感が残りやすい。大人が準備したものを、それなりにクリアして褒めてもらってきたことで、自分を有能な人間だと思い、大切にされ評価されるに値する人間だと思い込んでしまう。
そのため仕事という生存競争の中で、思うようにいかないと、クリアしやすい課題を与えない上司や会社や社会が意地悪をしているように思ってしまう。被害者意識を抱く。そして、引きこもる。あるいは、秋葉原の事件のような存在証明のための犯罪を起こす。
P200
すでに触れたように、幼児期から多数の家族メンバーで暮らしていれば、人の気持ちを読み、群れの動きを察知することが何よりも大切になる。しかし、いまや、人との親密で多様な体験は量・質ともに激減している。それに代わって、テレビ番組やウェブなど、人の気持ちとは関係のない情報が溢れている。人の気持ちを読む訓練がなされず、ものや情報そのものとの関係が優位な環境で育つことになる。
そのうえ、たとえば母子家庭であれば、母親の子どもの気持ちを察する能力が低いと、子どもが人の気持ちを読む能力を身につける機会が格段に減る。家族のメンバーが少なくなれば、多かれ少なかれ、このようなことが起きうる。
P201
とくに、確定診断としてアスペルガー障害とするほどの特徴が希薄な、軽度のアスペルガー傾向を持つ若者や子どものケースが急増している。すでに述べた対人恐怖症・不登校においては、あきらかに、この種の傾向をケースが急増している。
P205
若者たちは、個性を大切にしなさいと言われつつ、空気を読むことを強いられるという微妙な思春期を送る。そこでは、与えられたシステムから外れないように、ソコソコに課題をクリアしてひっそりと生きるしかない。
ソコソコにクリアできなくなると、戸惑い苦しみ、結果、培養植物的に自分の世界を限定して生きようとするか、クラゲのようにフワフワと生きるようになる。そのため、思春期になると、引きこもりや非行のような問題行動がはっきりしてくる。
P212
いまや家庭の周りから絆の深い「群れ社会」が消えたため、養育環境で受けた影響が群れ体験によって修正されることがなくなった。
P213
いまや、スポーツでも芸術分野でも政治家でも医者でも、専門的な仕事に就くには、家族の支援が不可欠になっている。実際、二世、三世の議員・選手・アーティストが増えている。私の周りにも、親の影響で医者になっている若者が多い。今後、養育格差はますます大きくなり、社会は硬直化していくに違いない。
P215
親の安定したかかわりは幼児期から学童期まで必要であるが、学童期に入ったら、子どもが一人で生きていく力を育てるという方向性が必要となる。
まず、大人扱いをすることが大切だ。自分のことはなるべく自分でさせるようにする。
で、著者自身も書いているように、現代の若者は悪いことばかりではない。
しかし、養育格差が起きやすいというのが著者の主張である。
若い世代に生きにくい世の中になっているのは、間違いないけれど。
なんとか、しぶとく適応していってほしいと思う。
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