かつての要件事実教育は実務家養成の苦行だった(ゼロからマスターする要件事実)
かつての要件事実教育は実務家養成の苦行だった(ゼロからマスターする要件事実)
月刊「税理」2018年3月号より。
ゼロからマスターする要件事実 第27回
法曹自慢の実務教育システム
岡口基一(東京高等裁判所判事)
タイトルは勝手に変えています。
お許しを。
今回は、要件事実教育についての話の第1回目という位置づけ。
多くの法曹は、要件事実教育を「法曹が最低限度の実務能力を身につけるための制度的担保」と考えていたのだと。
要件事実論は、あくまでも裁判官の判決書の「当事者の主張」欄の起案スキルだが。
判決書段階では、適切な攻撃防御方法とそれぞれを構成する要件事実の主張が並ぶようになっていた。
ここで、著者説明から離れて、私の勝手な理解を述べれば。
要するに、生の当事者主張のままでは、裁判というプログラムに乗らないので。
データ整序して、正規化したデータをプログラムとして与えるのが要件事実論。
つまり、要件事実論とは、データ加工技術スキルだと。
私は勝手に位置付けています。
さて、著者の説明に戻ると。
かつては、司法研修所の「民事裁判」授業の大半が要件事実教育だった。
つまり、この要件事実の主張整理の練習を繰り返し行うものだった。
その際には、本物の訴訟記録を模した模擬記録が使われており。
修習生は、訴訟物の特定から作業を進める必要があった。
そして、その後は、ブロックダイアグラムを作成して。
請求原因、抗弁といった攻撃防御方法の全体像を俯瞰する。
更に、記録の中から具体的事実(=要件事実)の主張を探し出す。
それを適示して、判決書の「当事者の主張」欄を完成させていた。
まだ、実体法と訴訟法の正確な知識が不完全な修習生なのに。
いきなり実際の訴訟と同じ作業をやらせるかなりのハードワーク。
しかし、それでも多くの修習生はなんとか苦行を乗り越えて。
卒業試験たる2回試験を合格するレベルに達して実務家になっていった。
この要件事実教育の「民事裁判」科目は、全員必修科目だった。
裁判官志望者だけでなく、弁護士・検察官志望者も必修科目だった。
それは何故か、というのが次回だそうです。
個人的に疑問なのは、実務で接する弁護士さん達を見ていると。
皆さん、この教育を受けているのだろうか、ということ。
思考法が明らかにそうだ、という人達も確かにいるのですが。
なんか、正直、ドイヒーな人達も過去にはお見かけしました。
次回の連載で、そのあたりの謎が解ければいいなぁと。
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