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2018/05/25

不必要に歯削った傷害罪、歯科医は無罪主張 岡山地裁(産経WEST)

不必要に歯削った傷害罪、歯科医は無罪主張 岡山地裁(産経WEST)

 記事削除

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2020/06/23 22:08 追記と修正

当事者と思われる方から、無罪判決が出たので、記事を削除するようにとの連絡が来ました。

 そこで指示された事件番号からは、地裁判決だけしか入手できなかったのですが。
 なかなか興味深い内容でした。

 元の記事部分は削除するとともに、改めて、判決文の興味深い部分をピックアップしてみます。

岡山地裁令和2年3月24日 平成30年(わ)第44号_傷害(予備的訴因業務上過失傷害)、傷害被告事件

内容としては、2つの患者分の話で、まず1人め。

「また,左下8番が抜歯されたのにこれを否定し,右下8番を抜歯したと述べるなど,抜歯された箇所ですら左右を誤って記憶し,「歯が痛い」と述べた記憶もないとカルテの記載に反する供述をするなど,痛みの内容や歯科医師に対する申告内容について正確な記憶の保持がなされていないと窺われる。cは,本件歯科では被告人の説明を受入れたものの,6月13日にd歯科クリニックを受診し,被告人が処置した右下6,7番を開封した上で処置を受けた際,eから,同歯は虫歯があったような感じではなかった,b歯科にはよくない評判があり,今後歯科の治療をさせないよう協力して欲しい旨告げられたと述べ,公判廷では被告人に強い憤りを感じる,治療行為ができないようにして欲しいと述べており,このようなeからの誘導的発言や被告人を貶めて不信感を募らせる発言により,本件切削時点で上記疼痛がなかった旨記憶が変容した可能性も否めない。」

 つまり、別の同業者が、吹き込んだ可能性があると。
 どの業界でも同じなのですね、恐ろしいことですが。

 そして、レントゲン検査をしなかったことが問題だとの指摘には。
 裁判所は、やらなくても診断は可能との意見書を採用。

「結局のところ,歯髄炎の有無を診断するに当たっては,問診,視診,打診,冷温診等を行い,これらによって特定の歯について強い自発的・継続的疼痛が認められれば,レントゲン検査をすることなく歯髄炎と診断することができるとのg意見には十分な説得力があり,採用することができる。」

 更に興味深いのは、この事件、取調状況の録音録画内容があり。
 検察での取り調べの恐ろしさが、暴かれている点。

「被告人は,公判廷において,上記弁解録取手続では,他の患者のものと混同して診察状況を供述した,その後の取調べでカルテ等を見て混同に気付き,当該取調べで検察官にその旨告げたなどと供述する。この点,取調状況の録音録画内容(弁33)によれば,弁解録取の際に被告人は金属の詰め物があったのは右下7番であるなどと客観的事実と明らかに相反する内容を述べ,平成30年1月24日の取調べにおいては「記憶違いですね。別の方でした。」と他の患者を想定していた旨述べているから,カルテを見せられないまま記憶喚起する機会もなく他の患者と混同するなどして事実と反する供述をした疑いが強く,インレーのない歯にう蝕がなかった旨の上記弁解録取書の内容はcを対象とするものとしては信用できない。よって,検察官の主張は採用できない。」

 裁判所が、合理的な判断を下してくれているので助かっていますが。
 恐らく、かつてはこれで有罪にされていたのでしょう。

 取調状況の録音録画が開始されていることも興味深いですし。
 裁判官の合理的な判断ぶりも、評価すべきと思われます。

 そして、2人めの患者についてですが。
 ここで、「LINE履歴(甲25,弁1)」が客観的証拠として出てきます。

 もう、LINEって、証拠に使われる時代なのですね。
 刑事事件でもあり、当たり前かもしれませんが。

 我々は、そのあたり、意識しないといけないのかもしれません。
 良い方にも、悪い方にも。

 そして、下記が事実認定されている。

「Aは,被告人から従前受けていた治療を含む事柄についてLINEで度々やり取りをしていた母に対し,本件切削後のLINEでは代金が高いことの不満は述べているが,無断で歯を削られたことを告げていない。また,Aは,本件切削がなされた直後に婚約者とLINEでやりとりをしているが,その際にも無断で歯を削られたことを告げていない。」

 結果、患者側の話に、各種の不整合が生じていることから。

「これらの事実関係に照らせば,Aが本件切削に同意していなかったとか,実質的に同意の効果を損なうような説明の欠缺があったことが合理的な疑いを超える程度に証明されているとはいえない。」

 との結論に。

 ということで、削除要請を頂いたものではありますが、内容が興味深いので。
 記事タイトルは残して、この追記を入れることをお許し頂ければと思います。

 

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