夫の後始末(曽野綾子)その1 トイレの床に排水装置を付ける
夫の後始末(曽野綾子)その1 トイレの床に排水装置を付ける
夫の後始末
曽野綾子
講談社 2017年10月2日第1刷発行
自らが、あるいは親が高齢者になりつつある子には必読書。
そのように断じておきます。
夫である三浦朱門が認知症を進行させる際に、著者は決断した。
自宅で死ぬまで普通の暮らしをしてもらうため、自分が介護すると。
ただ、それは、手抜きをして、自分なりのやり方を貫くことが前提。
周囲の人間の言葉に惑わされず、知恵を使って柔軟に、不要なことは捨てる。
そのような決断によるルールと強い意志で成り立つ生活であった。
ただし、著者の場合、一般の家庭より恵まれている要素が大きく2つ。
それは成功した文筆家であるため、生活費は一般よりはるかに潤沢だったこと。
まずは、これが非常に大きかっただろうことは言うまでもない。
そしてさらに、高齢者が住むための住宅機能をすでに手に入れていたこと。
特に、トイレの件はうなるしかない。
「つまずくこと。小回りがきかないこと。段差が辛いこと。孤立した空間に本人を置かないこと。トイレを汚すような事態になった場合に便器はおろかほとんど壁まで洗えるように、床に配水装置をつけることなどすべてを、そのころから用意してしまった。」
(P17-18)
寝室近くにトイレを、車いすが入る大きさのトイレをまでは、もはや常識だが。
布団を含めて、ウオッシャブルにするというのは、慧眼としか言えない。
ところで、上記では手抜きと書いたけれど。
本当は、手抜きではない。
物事の優先順位をつけ、優先度が高くないものは、割り切る。
しがらみを含めて、捨て去る、という強い意志と価値観に基づく行動。
他人の目を気にしている暇などない、という覚悟。
そのうえで、先を読む力と備え、それが著者の素晴らしさだと思う。
続きます。
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