白表紙「第1巻」」の要件事実(ゼロからマスターする要件事実)
白表紙「第1巻」」の要件事実(ゼロからマスターする要件事実)
○ゼロからマスターする要件事実 第33回
白表紙「第1巻」の要件事実
岡口基一(東京高等裁判所判事)
要件事実が主要事実と同義だとの説について。
司法研修所民事裁判教官室が説明したことが、かつてあると。
それが、「白表紙 第1巻」と言われている「民事訴訟における要件事実第1巻(増補版)」だと。
税務業界では、課税庁の内部用質疑応答集を、かつて白表紙と呼んでいました。
それは実際に白いセロファン表紙がついていた、いかにも内部資料というものでした。
司法業界でも、似たような事情があったのかどうか。
そこは、本稿で書いてありませんが、話を元に戻すと。
白表紙の中で、「主要事実と同義に帰着」するとの表現は出てくると。
しかし、これは、何故そのような記述をしたか考えると、要件事実=主要事実説ではないのだと。
実務での要件事実論創成期において、実は第1の要件事実論とは別の要件事実論があった。
一部の博識な裁判官が推す、ドイツ法における要件事実論である、第4の要件事実論だと。
これは、請求原因等の攻撃防御方法の構成要件のことであり、抽象的な要件を指す。
日本民法の母法がドイツ法である以上、こちらが筋だという考え方が当時一部に存在したと。
現在の民法学者については、当然に、こちらをベースに考えているけれど。
それは、歴史的な観点から言えば、まぁ、一定程度理解できると。
ただ、実務は、第1の要件事実論しか取り得ない。
いくら「ガラパゴス要件事実」だろうが、現場はこちらを使うしかない。
そのため、両論併記した上で、具体的事実を意味する第1の要件事実を妥当とした。
その際に、白表紙で、上述の表現をとったのだと。
要するに、同義に帰属するというのは、言わば逃げですね。
そう違うわけではないから、実務での有用性の高い、こっちでいいじゃんと。
その程度の言い訳での表現に過ぎなかったという意味なんでしょうね。
いや、私の勝手な想像ですが。
ところが、その後、「主要事実と同義に帰着」が一人歩きし始める。
平成23年の「新問題研究要件事実」でも、同種説明が登場するのだと。
これも司法研修所民事裁判教官室によるものなので、影響が大きい。
なので、次回以後、これを確認するのだと。
うーん、この連載ってここまで来ると、実は同床異夢だったということが見えてきますね。
始めた際の編集者は、税理士向け連載を望んだ筈ですが。
著者の岡口判事は、司法業界では「王様の耳はロバの耳」と書けないから、税理士業界紙に書いてしまえ、という意図だったのですかね。
まぁ、連載が続いているということは、編集部も承知しているのでしょう。
ただ、既に、税理士のための知識という範囲からは逸脱していますよね。
最後まで連載を走り終えることができるのか、注視していきたいところです。
あと、本文からすればタイトルのカッコ付けは、「白表紙 第1巻」とすべきですよね。
読んでいて、編集が手を入れていないのだろうな、という感じが多々あり、なんだかです。
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