実は判決書作成の手引き書である「新問研」(ゼロからマスターする要件事実)
実は判決書作成の手引き書である「新問研」(ゼロからマスターする要件事実)
月刊「税理」2018年11月号より。
○ゼロからマスターする要件事実 第35回
実は判決書作成の手引き書である「新問研」
岡口基一(東京高等裁判所判事)
「新問研」自体には、そうは書いてないのだけれど。
実は、「新問研」は事実上判決作成の手引き書として作られていると。
訴訟類型の説明で当事者主張記載部分から始まるのは。
それこそ、訴状・答弁書の当事者主張書面を模したものだし。
当事者主張の中から、請求原因・抗弁等の構成要件に該当する具体的事実の抽出作業をするのも、まさにだし。
各章最後で、抽出結果が「事実記載例」としてまとめられるが。
内容も形式も、判決書の「当事者の主張」欄そのものじゃんと。
どう見ても、第1の要件事実について説明しているだろうと。
事実上判決作成の手引き書そのものなんだけれど。
ところが、肝心の「新問研」自体にそう書いてないものだから。
読者は、自分がそういう視点を持たずに読んでしまう。
結局、ずっと隔靴掻痒状態が続いていくことになり。
試験に合格しても、「新問研」の本当の目的を意識しないままになる。
「新問研の本当の目的を理解しているのは、この連載を読んでいるみなさんくらいなのです。」
うーん、税理士向け雑誌でこれを言う確信犯ですな……。
話を戻すと、第1の要件事実固有の用語が文中で出てきても。
意識のない初学者には、何のことか分からない。
過去連載で登場した「摘示」あるいは「黙示的主張」が例示されている。
黙示的主張は、要するに書いてないけど、そう読めるよって話ですね。
あくまでも、裁判官が認定する際に出てくる概念。
更に、「概括的主張」という言葉も取り挙げています。
これって、私の理解では、戦場が違う2つの問題がある話ってことですね。
当事者主張で、どこまで個別具体的に挙げておくかの問題と。
裁判官目線で、摘示をどこまでやるかという問題。
読者は前者の目線で読んでしまうけれど、「新問研」では後者なので。
読んでいて、わけわかめになるじゃんねと。
ま、分からなくはないですが、教える側で指摘する人っていなかったのかな。
そんなにこの業界って、教育者不作なのか、ちょっと信じられない。
で、更に「新問研」には極めつけの初学者理解不能部分があり。
そのP104を次回扱って、「新問研」の話を終わるのだそうです。
なんか、筆者の要件事実論への愛が、周囲に理解されない、という感じですね。
私自身が法曹じゃないので、本当のところがどうかは分かりませんが。
| 固定リンク
« 崩落したのは「私有地」で「自然災害」…三郷町崩落斜面、住民が1億3500万円の工事費負担で復旧へ(関西テレビ) | トップページ | 文春砲の落日~テレビは文春・新潮を急激に取り上げ消費した~(境治) »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 伊丹敬之先生は井尻教授と接点があった_企業会計(2024.11.30)
- 大昔にある税務雑誌の購読を止めた件(2024.10.07)
- 大量閉店「ヴィレヴァン」経営が犯した最大の失敗_東洋経済(2024.10.02)
- 地震を知って震災に備える(平田直)(2024.09.17)
- 私の実家が売れません!_高殿円(2024.09.03)
「税務」カテゴリの記事
- 扶養の範囲と年収の壁_週刊T&A master(2024.12.12)
- 国民案なら減税7.6兆円 「年収の壁」で政府試算_共同通信(2024.11.01)
- 大昔にある税務雑誌の購読を止めた件(2024.10.07)
- 市道として売却したのに市が所有権移転せず…男性に45年課税、訴え無視し差し押さえも_読売新聞(2024.07.11)
- 大企業や富裕層が税金対策に悪用する「ペーパーカンパニー」の所有者を見つけるコツをジャーナリストが解説_Gigazine(2024.04.19)
「法律全般」カテゴリの記事
- 相続した土地100坪もいらないのに手放せない 「ただでいいから使ってほしい…」63歳苦悩 要件厳しい…国が引き取る制度の実態_信濃毎日新聞デジタル(2025.01.17)
- クラウドサービス提供会社に独禁法違反で排除措置命令 公取委_NHK(2024.12.31)
- 放課後デイ利用の中1溺死事故 業過致死罪の支援管理責任者に有罪判決、大阪地裁_産経新聞(2024.12.26)
- 「どう猛な犬は、殺傷能力のある凶器と一緒」闘犬に襲われ一変した生活 問われるモラルと飼育方法…安全に家族として迎え入れるには?_共同通信社(2024.12.24)
- 自転車の歩道と車道の摘み食いを禁止すべき(2024.12.22)
コメント