あっさりと捨てられた「テンプレート」(ゼロからマスターする要件事実)
あっさりと捨てられた「テンプレート」(ゼロからマスターする要件事実)
月刊「税理」2019年03月号より。
〇ゼロからマスターする要件事実 第39回
あっさりと捨てられた「テンプレート」
岡口基一(東京高裁判事)
民事裁判における判決書様式の変遷について。
何故、智の結集であるテンプレートが捨てられるに至ったのか。
まず、旧様式の「当事者の主張」欄は、智の結集である反面。
すべて内容を再構成していく必要があり、作成負担も多大だった。
請求原因・抗弁などに事実が分断され、法律を知らない一般人には読めない。
法律家にとっては正確至極でも、当事者にはわかりにくいスタイルだった。
民事訴訟で争点整理を中心とした審理方法への変更を行おうとしている時期。
それを踏まえ、裁判所当局からの指示で、新様式での判決文作成方法が公表された。
旧様式は、前半に当事者の主張欄、後半に事実認定欄があるというスタイルだった。
新様式は、まず、争いのない事実や証拠から容易に認定できる事実を記載する。
なるほど、争点整理という目的から考えると、これが素直。
神様の目線での結果だけ見せられるのではなく、プロセス重視なんだろうな。
次に、争点が何たるかを示し、各当事者の争点に関する主張を記載する。
裁決例では、表形式で並べてありますが、裁判例ではつらつら並びますね。
この各当事者の争点に関する主張は、旧様式の当事者の主張欄と異なり。
従来の事実摘示ルールに厳密に従う必要なく、裁判官が自由に記載してよいと。
当事者の用意した主張書面の電子データをコピペして、要約すれば。
以前のような苦労は不要になってしまったと。
書証の成否も、ルールが緩和され、根拠の逐一での記載が不要になり。
偽造との争いがなければ、口頭弁論期日証書でも記載不要になったと。
この新様式が、裁判所当局が音頭をとったものだったこともあり。
新判決の利用が急速に普及し、旧様式の利用は限定的になったと。
筆者は、「裁判所当局に逆らっていると思われかねなかった」とか書いてますが。
ちょっと、考え方が偏っているんじゃないかって気がします。
普通に、裁判官でもパンピーは楽な方に流れたのだろう、と思いますね。
実際、著者も、起案に要する時間は、劇的に短くなったと言っていますし。
著者は、懐古的に「国民的な知的財産の喪失といってもよいでしょう。」と慨嘆し。
何故大事なものを捨てたのか、次回、当局の狙いを詳しく見ようと言ってます。
ということで、かなり、今のやり方に批判的ですけれど、本当にそうなんだろうか。
ここは、フツーの裁判官の方のコメントを聞いてみたいですね。
私のような素人の感覚で言えば、芸術品を作るのなら、過去の賛美もわかりますが。
マスプロで処理件数を大幅に上げるのには、過去の手法では無理でしょう。
大多数のための法律・裁判制度という位置づけであれば、迅速性は絶対の要請。
いかに美しく素晴らしいロジックでも、多くの裁判官に復元できない処理は無理。
そう考えると、裁判所当局の考え方が,制度運営として正しかったのではと思えます。
あ、裁判官制度の導入については、また意見別ですけれど。
そういえば、月刊「税理」は、最近、地元の駅併設施設の本屋で買うのですが。
ここ数か月、棚に2冊置かれるようになって、ちょっとびっくり。
現時点で、博多のジュンク堂・丸善には一冊も置いていないのに。
何故、こんな田舎の書店で置いてしまうのかいな。
そもそも、一般人が絶対買わないマイナーな雑誌を、駅前書店に置いてていいのか。
私が買わなくなったら、売れ残り心配なんですが、さて。
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