株式引受の払込資金の融資における留意点(金融法務事情)
株式引受の払込資金の融資における留意点(金融法務事情)
金融法務事情2019年01月25日(2106)号より。
○実務相談室
株式引受の払込資金の融資における留意点
八田剛(三菱UFJ銀行法務部・弁護士)
取引先A社の増資について、グループ会社B社で株式引受けを行う。
その際の資金を全額銀行融資で賄いたいとの要請があった。
このB社に対する融資で、金融機関が留意すべき点は何か。
当然ですが、仮装払込に該当しないか、ですね。
そもそも本体で融資を受けないで、グループ会社で融資を受けて。
銀行からの資金を本体が融資したのと同じですから。
なんで、こんなスキームでやるのかが、まずは疑問ですが。
そこは何も書いていませんね。
で、A社の保証を受入れ、信用補完する場合でも。
保証の関与のあり方次第では、問題が生じ得ると。
例えば、払込後にA社が、保証債務履行で借入金全額弁済するなら。
払込資金が、A社のB社に対する求償権に切り替わることになる。
払込資金が会社として他に運用されることもないわけであり。
求償権について、別途実質的なA社資産と評価すべき事情がない限り。
仮装払込と評価されるリスクがあり、融資すべきではないと。
まぁ、どうみても、単なる環流ってなりそうですし。
では、上記事情って、どういういうものかの例示では。
適切な信用リスク判断で適正金利設定や適正回収期間が設定あると。
そんな事情があるなら、そもそもやらないでしょうね。
繰り返しますが、なんで、このスキームやるのか。
その目的を聞き出すのが、融資金融機関の本来でしょう。
この辺、どうも違和感あります。
なお、この事案とは異なり、仮装払込に該当しない例示があり。
銀行融資により、株式引受者に対する従来債務を弁済して。
株式引受者は、受領資金を払込金に充当する処理のケースで。
従来債権が真実に存在し、会社に弁済資力ある場合はOKと。
最高裁昭和42年12月14日判決で認められているのだと。
DES同様、自己資本比率が上昇するので、実質的な払込と評価できるためだろうとのこと。
これって、いわゆる疑似DESに銀行が融資する場合ですかね。
ちょっと気になるのは、会社に弁済資力があるかどうか。
この点って、実務ではあまり問われず実行されているような。
しかし、金融法務の目線からは、危ないのですね。
なるほど。
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