従来様式を廃止して新様式判決を導入した理由(ゼロからマスターする要件事実)
従来様式を廃止して新様式判決を導入した理由(ゼロからマスターする要件事実)
月刊税理2019年4月号より。
○ゼロからマスターする要件事実 第40回
テンプレートの廃止に躊躇しなかった裁判所当局者
岡口基一(東京高等裁判所判事)
タイトルは勝手にいじってます。
すみません。
従来様式判決の廃止は、やはり、処理件数増加への対応が理由。
民事訴訟の事件数は増加する一方で、裁判官の処理能力を超えるとの懸念を持った人物がいた。
それが、後に最高裁判事になる、泉徳治最高裁事務総局民事局長。
事件の滞留や審理期間の長期化をもたらすとの危惧を持っていた。
では裁判官に過大な負担を掛けているのは何かとなり。
当事者の主張欄に多大な労力を要する従来様式判決だろうとなった。
本来、判決では、事実認定こそが重要である筈なのに。
その前捌きである主張の整理に精力を注入することが疑問視されたと。
そして、争点整理中心にという民訴法の大改正の流れにも合うし。
この方が紛争解決に資するし、当事者に分かりやすいだろうと。
そこで、より簡易な判決書が望ましいという方向性が出た。
ただ、流石に自分だけで決めるわけにはいかないということで。
最高裁長官である矢口洪一氏に相談した。
矢口氏は、弁護士任官を積極的に進めるべきだとの視点を持ち。
裁判官しか経験していない○○を養成する制度を疑問視していた。
そこで、弁護士任官を容易にするためにも、提案が望ましいと。
矢口氏もこれに賛同して、制度の見直しが一気に進んだと。
つまり、これって、予想通りですね。
制度が壊れるのを防ぐために、手を入れただけ。
しかし、岡口氏は、現場を知らない裁判所当局が言い出したので。
結果的にテンプレートは使われなくなったと言います。
現場では、智の結集であるものを廃止しようとするわけがないと。
行政畑ばかり歩き、現場経験が乏しいので、愛着がないのだと。
だから、「とんでもない決断を平気ですることができた」と。
でも、前回も書きましたが。
私は、岡口氏の見解が偏っているだけだと思います。
なにせ、現場は楽な方に流れるのは、当たり前のことで。
幾ら精緻でも、運用に支障のある制度が長続きするわけがない。
それこそ、制度全体を見て、行政経験ある人間が決めたからこそ。
システム全体が動くための制度改革ができた、典型例でしょう。
それを懐古主義的に、無自覚に制度批判するのは。
全体を見た経験もなければ、見る覚悟もないからと言ったら言い過ぎですかね。
確かに、テンプレートの廃止により、失ったものもあるでしょう。
しかし、それは別のもので補えば足りる筈です。
エリートでしか運用できない制度を最上位に位置づける価値観は。
どうも、私には、合わない、というのが本音です。
妄言多謝。
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