そして共通テンプレートのない実務が始まった(ゼロからマスターする要件事実)
そして共通テンプレートのない実務が始まった(ゼロからマスターする要件事実)
月刊「税理」2019年05月号より。
○ゼロからマスターする要件事実 第41回
そして共通テンプレートのない実務が始まった
岡口基一(仙台高等裁判所判事)
新様式になって、裁判官が正しい判決文を作成できなくなったという話。
旧様式であれば、判決文が正しいかの「検証」が出来たのだと。
・請求の内容
・請求の個数
・複数ある請求の関係
これらについて、裁判官が正確に把握できているのか。
新様式は羅列に過ぎないので、判決文を検証できなくなっていると。
また、必要な事実主張がされているかも分からないし。
あてはめも、争点になっていない限り、検証不能になっていると。
代理人弁護士側からも、攻撃防御方法の全体像の確認が。
当事者の主張欄を確認することで可能であったのに、出来なくなったと。
更に、書証の成立をいかなるルールで認めたのか。
その検証もできなくなっていると。
そして、教育的ツールとしての利用も出来なくなっていると。
結果、裁判官は、誰でも表面上はノーミスの判決文作成が可能になり。
彼がプロの域に達しているかどうかの見極めができなくなったと。
なるほど、分かる部分はあります。
しかし、これって、多分に、裁判官の教育システムの問題ですね。
会計士であればCPE制度を導入して、もう10年以上でしょうか。
その思想は何かというと。
知的に高度な水準の業務に関わる専門家として維持するには。
継続的な教育制度なしには不可能である、という現状認識ですね。
遅ればせながら、税理士会も近年義務化しましたし。
継続的な知識や技能のアップデートの仕組みは、専門家には必須。
医師などは恐らく典型例であり。
歯科医などは、どれだけの知識の更新があるのか怖いくらい。
それは、恐らく、いわゆる士業など専門家の常識になりつつある。
これが、現代という時代での共通認識でしょう。
逆に、裁判官は、そのような仕組を持たず放置されていた(る?)。
ある意味驚きで、そのことの方が非難されるべきなのだと思います。
そして、従来から、一部切り取っただけの、結論ありきの判決はあった。
テンプレートがあった時代でも、正しい事実認定と正しい法律適用が検証できない判決文は、多数あった筈です。
なので、このあたり、著者の主張には非常に違和感があります。
ただ、現状の裁判官制度が歪みを持っていることも事実なのでしょうね。
そこを制度運営側が、どのように補正していくのか。
また、従来のテンプレートに代わる標準的な枠組みがあるべき。
そのような主張はあり得るような気がします。
何にせよ、懐古的に慨嘆するだけではなく。
先を見て、具体的な改善策を考えていくべきが実務家。
ここは、官と民との違い、ということかもしれませんね。
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