要件事実論序説(東孝行)
要件事実論序説(東孝行)
新様式だから要件事実をないがしろにしてよいわけではない。
では、どうするのか、ということに対する元裁判官の1つの答えが下記。
裁判官が訴状を検討し、答弁書・準備書面から争点整理する。
その段階で、裁判官は手控えを作成している。
そのうち、争点整理の部分を、著者は「訴訟メモ」と呼んでいる。
ここには、要件事実の整理そのものが詰まっている。
そこで、これが判例分析の学習にも使えるということになる。
判決が、
・どのような事実を請求原因として理解し、
・どの事実を抗弁として位置付けているか、
を意識的に読むことで、内容の正確な理解ができることになる。
著者は、訴訟メモには3種類があるとする。
【1】標準訴訟メモ(旧様式判決に対応)
【2】新様式判決訴訟メモ
【3】簡易訴訟メモ(最高裁判決における原審の確定した事実関係の概要部分に対応)
ここで、【2】新様式判決訴訟メモについて、下記のように言っている。
△
「争いのない事実」の記載があっても、そのうちどの事実が原告の主張すべき請求原因事実であるか、被告の抗弁として主張すべき事実であるかなど意識的に事実を分類して記載すべきである。
(略)
もともと新様式判決は解りやすく一般に親しめる判決を目指して考案されたものであり、裁判官が要件事実を意識しないで判断することを認めた制度ではないからである。判断者である裁判官はしっかりとした要件事実の認定を経た上で判断すべきである。したがって、裁判官は新様式判決を起案するときもその訴訟メモは請求原因、抗弁など要件事実を意識して判断した結果の記載をしていることを理解した上で訴訟メモを作成すべきである。(P18-19)
▽
本来は、このあたりを制度的に標準化して、研修システムに組み込むべきだった。
そんな気がしますね。
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