若手法律家のための民事尋問戦略(中村真)その4 証拠調べ手続きでは、質問と回答のやりとりが録音される等
若手法律家のための民事尋問戦略(中村真)その4 証拠調べ手続きでは、質問と回答のやりとりが録音される等
若手法律家のための民事尋問戦略
中村真 学陽書房 2019年10月16日初版発行
続きです。
いくつか、初めて知って、へーと思ったこと、その他なるほどを。
○証拠調べ手続きでは、質問と回答のやりとりが録音される(P51)
簡易裁判所での審理だけは別だそうですが。
録音を元に、尋問調書が作成されるのだと。
後で録音を聞いても、誰の発言かわからないことが、よくあるのだそうです。
そこで、弁護士は、質問を行う前に、自分の肩書(立場)と名前を発言せよと。
なるほどねぇ。
司法だけでなく、行政も録音対応が当然の時代にならないかと思うことありますが。
民間が不利になることもあるので、なかなか難しいかな。
○「陳述書に全く記載のない事項を法廷で語らせている場合、争点の認識、尋問準備、事件の見通しの少なくともどれか1つが誤っている。」(P67)
TIPSで書いてあるのですが、これ、本当に大事な、文章見直しの視点ですね。
自分のフレームワークがおかしい場合に気がつくために、参考になります。
○反対尋問の目的は、主尋問での供述の信用性減殺であり、自己に有利な供述の引き出しや証人等の供述に自己矛盾を認めさせることではない(P142-143)
これ、テレビドラマなどを見ていると、確かに目的を勘違いしますね。
弁護士の優秀性は、まさに、証人に間違いを認めさせることにあるんじゃないかと。
しかし、そうではなく、むしろ、そのような質問はポイントを外したり。
踏み込みすぎた、典型的なよくない反対尋問になりがちだと(P144)。
矛盾指摘は、反対尋問でやるのでなく、尋問後の最終準備書面でやれと。
相手方は、尋問後なので、リカバリーもできないのだと(P145)。
更に、裁判官も、この段階では、さほど興味を向けていない印象があると。
補充質問でも、事実を聞くに止め、矛盾質疑まで踏み込まないと(P146)。
いやー、このあたりは、多分、世の中では、全く逆に思っているでしょう。
ウチの先生は、なんで、もっとやってくれないんだと不満すら持つのかも。
この辺は、聞いて初めて分かる部分ですね。
一番効果的・適切なところで反撃するって話ですから。
ただ、逆に言えば、依頼者に見立てと戦術を伝えておかないとダメなんでしょうね。
正直、ここまでだけだと、優秀な弁護士とダメ弁護士との区別がつかないかと。
○反対尋問ではダメ押し尋問はダメ(P174-176)
相手から有利な回答を得た場合に、念押しで確認する作業、ダメ押しはダメだと。
供述翻意させるチャンスを与えることになるし、気づきやすくするでしょと。
なるほど、最終準備書面で指摘しろという話があれば、こうなりますね。
ドラマに毒されている頭を切り替えないと、この辺は危険だってことかな。
○弾劾証拠は通常の証拠と区別される(P187-189)
尋問の後に隠し玉として出すのが弾劾証拠だという話で(P185)。
効果的な場合もあるが、あくまで供述の信用性を弾劾するための例外なので(P187)。
時機に遅れた攻撃防御方法として、裁判所により却下される恐れがあると(P188)。
後出しだから当然とは言え、なかなか難しい部分なんでしょうね。
○異議は、必ず証人が問いに答える前に出す(P201)
不適切な質問を制限することが趣旨だから、答えてしまったら。
なかったことにはできないのだと。
ということは、可能であれば、回答する前にワンクッションおいてね。
と言える方がいいのだろうか、いや、わかりませんけれど。
いや、法律家でない私でも、大変勉強になりました。
法律的要素を必要とする文書に携わる方には、是非、一読をお勧めします。
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