規範的要件(容易想到性)の総合的判断とは(「要件事実論 事始め」[林浩])
規範的要件(容易想到性)の総合的判断とは(「要件事実論 事始め」[林浩])
BRIDGEWORK
要件事実論 事始め ~要件事実論からみた進歩性~
審判部首席審判長 林浩
特技懇(特許庁技術懇話会)誌273号
規範的要件の総合的判断がどういうものか、ちょっとモヤモヤあったのですが。
これを読んで、なんか納得いきました。
あくまでも、私の理解のメモとしてですが。
残しておきたいと思います。
まず、特許法29条2項における容易想到性については、規範的要件であるので。
その存在は、総合的に判断されることになる。
ここで、評価根拠事実は、容易想到性の存在を肯定し得る事実であり。
単なる寄せ集めであることなど、あるいは技術分野の関連性など動機付けの存在。
評価障害事実は、容易想到性の存在を否定しえる事実であり。
引用発明と比較した有利な効果や阻害要因の存在。
では、具体的にどのように総合的に判断することになるのか。
評価根拠事実と評価障害事実をどう扱うべきか。
「成立を肯定する場合には,「容易想到性」の評価根拠事実が存在することについて判断せずに,評価障害事実が存在しないことだけから結論を下すことは,判断のプロセスからみて不自然なものと感じられます。審決における相違点の判断の項で,「顕著な効果が存在しないので」あるいは「技術的意義がないので」相違点は容易に想到し得た,といきなり判断すると多くの方が違和感をもたれるのではないでしょうか? やはり,動機付け等の評価根拠事実の存否を判断し,それが存在する場合に,続いて,評価障害事実である顕著な効果等の存否を判断し,結果,「容易想到性」があるか否かを総合的に判断するというのが自然な流れかと思います。(tokugikon 2014.5.13 no.273 P105-106)」
つまり、評価障害事実がないから即成立だという判断をするのではなくて。
評価根拠事実があるといえるのかの判断も必要だということで。
総合的な判断の場合には、両方の存否判断が必要だということなのでしょう。
また、この点が、総合的判断を要する規範的要件の特色なのでしょうね。
そして、これを要件事実論として取り扱っている意味が何かですが。
恐らく、下記マトリクス構造で整理しろ、の意味なのでしょうね。
つまり、これらを並列的に、同等で扱うことが総合的な判断ではなくて。
ウエートを付けてみるところに、総合的判断における要件事実論らしさがある。
そのような意味だと、私は理解しました。
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