本当の意味の「立証責任」(ゼロからマスターする要件事実)
本当の意味の「立証責任」(ゼロからマスターする要件事実)
月刊「税理」2020年3月号より。
○ゼロからマスターする要件事実 第51回
本当の意味の「立証責任」
岡口基一(仙台高裁判事)
裁判では、事実の存否が請求権の有無を決めることになるので。
事実認定が裁判のメーンイベントであると。
では、事実の存否が不明な場合(ノンリケット(non riquet))で。
どのように考えるべきかが問題になった。
そこで、いろいろ歴史があったものの(宣誓屋の話等は省略します)。
定説となったのが、証明責任規範という考え方だったと。
要は、不明な場合にどう取り扱うかを、先にルール決めせよと。
不明ならあることにするのか、不明ならないことにするのか。
いずれにせよ、裁判所は、不明となったら、事前決定された規範に従って。
裁判における判断として、あった、あるいは、なかったと判断できる。
例として、売買代金請求訴訟での訴訟物たる売買代金請求権について。
この請求権の発生は、売買契約の成立という法律要件によることになる。
ここでは、該当する事実の存否が不明なら、事実はなかったとされる。
契約の成立を積極的に立証できないと、不成立扱いにするの意ですね。
契約不成立の結果、原告が不利益を受けることになる。
この不利益を立証責任と呼ぶのだと。
そして、「売買契約の成立については原告が立証責任を負う」と表現すると。
これが本当の意味の「立証責任」なのだという。
ただ、日本の民事訴訟では、この本当の意味での用法と異なる用法が使われていると。
次回、その理由を探るとなっています。
どこが本当なのかは、異なる用法が出てくるだろう次回にならないと分からない。
まぁ、私待つわ、ですかね。
で、請求権の発生要件は、常に原告に立証責任があるわけではないと。
短絡的に考えて誤解するな、というのでしょうね。
この例として、無権代理人への損害賠償請求の話が扱われている。
請求の相手方が無権代理人であるのが請求権の発生要件、というのは当然だが。
この要件に該当する事実が存否不明という場合。
民法117条1項の規律は、どうなっているか。
「他人の代理人として契約をした者は、【自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、】……、相手方に対して履行または損害賠償の責任を負う。」
つまり、被告側である無権代理者に立証責任が負わされていますね。
この場合、事実の存否不明なら、事実はあったものとする扱いになっていると。
勝手にやられた人間に証明責任を一義的に負わせるのはおかしい。
恐らくは、そのような価値判断なのでしょうね。
ということは、いずれに立証責任を負わせるかは、権利の性質だけでは決まらない。
制度趣旨に立ち戻って考えるしかないのでしょうね。
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