旧民法における賃貸借での減額請求権規定の読み方
旧民法における賃貸借での減額請求権規定の読み方
メモとして。
これによると、民法改正前の条文はできる規定になっていたものの。
既に、改正後の条文同様、当然減額規定と解すべきだとされていたことになる。
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賃料は利用の対価であるから,もし修繕義務の不履行によって全体の使用収益ができなくなっていれば,賃料債権は生じないと解される(大判大正10年9月26日民録2 7 - 1 6 2 7 )。問題は,雨漏りがするなどの,使用収益に不便が生じているにとどまる場合である。
関連する民法の規定として,賃貸物が賃借人の過失によらないで一部滅失した場合(修繕の範囲を超える滅失の場合)について,611条1項は,滅失部分の割合に応じた賃料減額を「請求することができる」と規定している.そこで,これを類推して減額請求権があるとする説もある.しかし,使用・収益ができなくなっているのに,請求しないと減額されないというのはおかしい.危険負担の原則からいえば,当然減額となるはずである(536条1項).
したがって,611条は限定的に解釈し,修繕義務の不履行によって不便が生じている場合は,使用・収益が妨げられた割合に応じて賃料債権が当然に減額されると解すべきであろう(最( 1 ) 判昭和4 3 年11月21日民集2 2 - 1 2- 2 7 4 1 [6 6 ]は使用収益が妨げられた割合に応じて賃料の一部の支払を拒みうるとする)。
民法Ⅱ第3版 債権各論
内田貴 東京大学出版会 2012年1月30日第3版第2刷 P204
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・改正前民法 第六百十一条(賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等)
賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
…… 「賃料の減額を請求することができる」との表現。
…… しかし、最高裁判例により、既に解釈は当然減額だった。
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・改正後民法 第六百十一条(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)
賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
…… 条文表現は変わったものの、実質的解釈は、以前からの踏襲。
…… 当然減額なので「減額される」との表現になった。
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