契約書作成のプロセスを学ぶ第2版(鈴木学・豊永晋輔)
契約書作成のプロセスを学ぶ第2版(鈴木学・豊永晋輔)
ビジネスに寄り添う契約実務の思考法
鈴木学・豊永晋輔
中央経済社 2018年8月15日第2刷第1刷発行
著者は弁護士で、鈴木氏は西村あさひのパートナー弁護士。
ともに実務経験20年以上というクラス。
書籍は、企業法務部内での対話型というスタイルで、契約作成検討プロセスを語る。
2014年の第1版に、民法債権法改正反映と第6章特殊な契約を追加したもの。
結論から言えば、学習用には意味がありますが。
実務書籍としては、取っ掛かりという感じの位置づけに留まる感じ。
更に言えば、著者の突っ込みが少し不十分じゃないのかなと思う点もある。
あるいは、読んでいて、訳分からない箇所もある。
例えば、
1)契約書作成の意義という話(P4~)。
著者は、紛争の予防・客観性の確保・コンプライアンスを挙げるのですが。
私の感覚から言えば、かなり違和感。
実務で、契約書が紛争の予防に役立つかというと、ないとは言えない程度。
そもそも、欧米流なら、元々が、紛争解決手段利用ありきの契約書なわけだし。
私の感覚であれば、最初に、合意内容の安定性を挙げるべきだと思う。
口で言っただけだと、後でうやむやになりやすいので、確実性を増す。
実務って、まずはそこからじゃないのだろうか。
書面にすることで、お互いの合理内容を明確化することが何よりだと思うのですが。
著者は、客観性の確保ということを、同趣旨で説明しているつもりだと思いますが。
しかし、むしろ、コンプライアンスこそが、客観性の確保というべきですし。
言葉の選び方とか、結構違和感あります。
2)売り手や制作者が海外にいる点の影響把握が不十分(P20)
図にすることで、相手などが海外在住であることなどが分かる。
そして、その影響に気がつくことができる、と述べているのですが。
肝心の影響部分の記述が、殆どありません。
この例出すなら、海外居住の相手ならではの影響は何か言うべき。
例えば、今回の場合、動産なのでいいと言えばいいのですが。
仮に不動産であれば、源泉徴収の問題が生じてきます。
その意味で、設例どうなのよ、なんですよね。
更に言えば、仏像って、今時、日韓関係で問題になっていますし。
通関時に騒ぎになる可能性もあるし、事例を差替えるべきだったのではと。
3)瑕疵担保責任の「隠れた」の削除が対応していない(P62・P70)
民法債権法改正で、瑕疵担保責任での「隠れた」要件が削除されて。
本書でも、契約書条項で削除したと、P62では述べているのですが。
P70では、「後者の隠れた瑕疵があった場合については、新設した8条2項で解除できるとしました。」とある。
うーん、もはや理解不能。
初心者レベル意識しているなら、もう少しきちんと書いて欲しい。
善解すれば、契約不適合の意味で、本書は瑕疵を使うとしているので(P59)。
そのまま勢い余って、隠れたが残ったのかもしれませんが。
そんな単純な話ではないのかもしれない。
著者は、改正民法の参考文献で、学者の本を幾つか挙げている(P84)。
潮見本とか読めなんて言っているので、読者レベルはもっと高い層なのかもしれないか……。
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