感染症の歴史に学ぶ教訓(磯田道史)
感染症の歴史に学ぶ教訓(磯田道史)
TKC会報令和2年8月号より。
○オピニオン No.193
国際日本文化研究センター准教授 磯田道史氏に聞く
感染症の歴史に学ぶ教訓
-日本古来の文化と知恵が糧になる
歴史的な目で学ぶ、というのがこのジャンルでも役に立つだろうと。
ただ、注意すべきは、著者は全て歴史から見解を導き出しているわけではない点ですが。
△
ところが現実には「劇場の閉鎖は演劇の死だ」と言う方もあり、お気持ちは痛いほど分かるのですが、それをメディアがこぞって報道し、戦時中の国民統制になぞらえて政府による自粛要請への批判も始まりました。未だにその論調は消えていませんが、これは国家が国民の統制をするとか、表現の自由を奪うとかいう問題とは次元が違います。「人間側の事情」を勘定に入れぬ厄介なウイルスから人命を守る話です。早くから接触制限をしなければ、持病がある人、高齢者、子どもといった「弱い人」から先に生命と人権が守られない事態になってしまう。
私も国家からの自由は大事だと思います。
でも人命には代えがたいのです。一時的な措置の受け入れが必要です。
(P34-35)
▽
このあたり、医療の役割についての視座がある。
そのことが前提だと感じます。
歴史だけ学んでいると、国家からの自由で思考停止してしまいがちで。
実際、そういう社会系の学者発言が少なくない気がします。
△
この職れ観が、善悪や病気と近いところにあるのが神道の特徴でもあります。日本の村では、入口付近や峠に「塞の神」という石蔵が祀ってあったり、祠があったりします。村に病気(職れ)を持ち込まないための「結界」なんですね。このうちそと「内」「外」のゾーニングを、日本人は日常生活でも徹底しています。
(略)
ただ、高い衛生観念でウイルスに対抗するには一つ条件があります。島・山・半島と私は呼んでいますが、島・山・半島といった隔絶した場所に住む人たちは身体的距離戦略(隔離戦略)を取ることである程度、病気が防げる成功体験が持てます。
(略)
これが地続きの国・地域で暮らしている人は、いくら身体的距離戦略を取ろうとしても、感染を防ぐことは格段に難しくなります。その点、日本は多くの島・山・半島を有し、また島国でもありますから、地理的条件に恵まれているといえるでしょう。
(P37)
▽
なるほど、穢れ観が、清潔を尊ぶ気持ちの基礎になっていると。
ただ、逆に差別を起こしやすいというのも、ごもっとも。
で、地理的特性というのも、そうなんでしょうね。
これは意識すべきで、我々はついつい自分の常識を世界の常識として語ってしまうことがある。
この件で思い出すのが、私の過去の体験で、大昔、大学入学で上京したてのころですが。
同級生とかに「東京って雨多いよね」と言って、変な顔をされていました。
後で気が付いたのですが、東京が雨が多いのではなく、瀬戸内が極度に雨が少ないのですね。
他の地方から来た人は、だから、雨が多いなどとは思わなかったわけですが。
瀬戸内が普通だと思っていた私は、それが独自の感覚だと分かっていなかった。
まさに、自覚すべき点だったわけで、若気の至りという感じでした。
△
前回のインタビューでも申し上げましたが、「ものごとを見えるようにすること」が会計の本質だと私は考えています。会計の力で「見えないもの」を「見える化」する。それが皆さんの極めて重要な役割です。
(略)
……などの環境変化は、ずっと「水面」を眺めている経営者でも、分かりにくい。
特に、今のような危機的状況では、経営判断を誤ったり直観が鈍くなったりしがちです。
(P39)
▽
なるほど、そういう見方もありますね。
初心忘るべからずで、意識しておきたいところです。
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