「「白」と「黒」とその間に広がる謎」との意味不明(ゼロからマスターする要件事実)
「「白」と「黒」とその間に広がる謎」との意味不明(ゼロからマスターする要件事実)
月刊税理2020年9月号より。
ゼロからマスターする要件事実 第57回
「白」と「黒」とその間に広がる謎
岡口基一 仙台高等裁判所判事
ローゼンベルグの原則検討の続きで、前回問題ないと言ったものの。
あれは、裁判規範として民法を考える部分についての話だと。
次に、裁判規範故に、請求権は、判決確定時に発生するとの点はどうかと。
ローゼンベルグの見解であり、賛同する日独の学者もいると。
ローゼンベルグ説では、「わからない場合」と「ない場合」とが結論同じ。
ここに、「わからない=ない」の秘密が隠されているとのよく分からない表現。
読んで行くと、そう明記していませんが、裁判規範としての民法とは。
純粋に裁判規範としてのみではなく、行為規範としての民法でもあると。
それを前提にすれば、売買代金債権は、裁判確定時に発生するのではなくて。
売買契約時に発生すると考えるべきことになると。
これって、意図的にかどうかは別にして、筋の良くない記述ですね。
そもそもノーマルルートじゃない局面の話なのに、ノーマルルート前提の話で説明。
なので、これだけで、
「このように考えると、売買代金請求権が裁判の確定時に発生するという考え方は、今後もこれを支持し続けるわけにはいかないように思われます。」
に論理飛躍してしまうと、もう意味不明。
経済学で、「完全競争理論は、現実に適合していないから、完全競争理論は無意味だ。」と。
そのように主張する経済学徒がいれば、何も分かってないねと白眼視されますが、それに近い筆の運びと感じます。
いや、困ったことに、上記の主張を言う人は、時たま、学者を名乗る人の中にもいましたので。
法律の世界でも、「極論の存在意義」に思い至らない人っているんだろうなと思いつつ。
で、このあたりのワープをさておいて、今度は、裁判で契約締結されなかったことが立証された場合。
ローゼンベルグの見解では、どうなるかという話に。
この場合、ローゼンベルグによれば、裁判規範としての民法555条は適用されることになると。
その結果、売買代金請求権は発生しないことになると。
著者は明確に書いていませんが、契約締結による効果発生を白、契約非締結による効果不発生を黒として。
民法555条は、白と黒の両方を定めており、これまで「白か黒か」と表現してきたと。
この辺、私はプログラムが動かないと言えば済むと考えているのですが。
著者の意図はまた別なのか不明です。
で、今度は「売買契約が締結されたか否かがわからないから民法が適用されない」とは。
どういう意味なのかが、次回だそうです。
相変わらず、隔靴掻痒感満点の記述というところですが。
この先に、見たことのない光景が広がっているのか、さてどうなるというところ。
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コメント
こんにちは。コメントありがとうございます。
内容の誤りという部分については、公式な法的素養のない私にコメントする能力はないのですが。
ただ、ロジックや文章構成が、どんどん乱れて、雑になっていくのに、何故か編集が待ったをかけない状態だよなというのは、感じてしまいますね。
特に、回の分け方については、読者目線ゼロなので。
「税理」編集部の罪は重いでしょう。
正直、そこを工夫するだけで随分違う筈なので。
著者に忖度してモノを言えないのでしょうかね。
この企画を始めた編集者の方は、もう「税理」編集部におられませんが。
今頃、どういう想いを持っているのだろうかと、思うことが多々あります。
書籍・雑誌というのは、著者のみで成立するのではなく、編集者の力も多分に大きいというのは、過去の経験で実感するところですから。
いずれにせよ、著者・「税理」編集部にはもっとスカッとした文章を読ませてほしいな、というのはずっと感じています。
投稿: はまちゃん | 2020/08/31 07:06
こんにちは。
前月号に続き、内容に疑問を持ったので、改めてここに来てしまいました。
今回は、更に酷いと思います。
「判決確定で初めて請求権が発生する」という考え方が妥当か否かを検討する、と言いながら、ろくに検討していないのですから。
この考え方に対する批判はいくつかありますが、1つ挙げると、「既判力(判決の拘束力)が、基本的に訴訟当事者にしか生じないという原則と、整合しない」という批判があります。
(岡口裁判官が例として挙げる)売買契約であれば、売主・買主の間で完結する話なので、矛盾は表面化しないでしょう。
しかし、裁判で問題となるのが(例えば)所有権なら、所有権が誰に対しても主張できる絶対的権利とされていることと、判決に拘束されるのが訴訟当事者などに限られることは、整合しません。
そういうこともあって、「判決確定で初めて請求権が発生する」と考え方は、少数説にとどまっています。少なくとも、それなりに修正を施さないと、採用できないと思われます。
そのあたりは、民訴の教科書を読めば書いてあることですが、岡口裁判官はまったく紹介していません。「そういう考え方もできるよね、まあ今後も維持するのは厳しそうだけど」くらいで終わっています。
法曹も知らない要件事実を教えようとする前に、まずは教科書を読んでくれ、と思ってしまいます。
それ以外にも内容の誤りがかなりありますし(時効の理解や、行為規範・評価規範の理解など)、文章のロジックも崩れてしまっています。
非常にまずいのでは…
投稿: 太陽 | 2020/08/31 02:24