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2020/08/18

「本当によい医者と病院の見抜き方教えます」(大塚篤司医師)

「本当によい医者と病院の見抜き方教えます」(大塚篤司医師)


本当によい医者と病院の見抜き方教えます
“患者の気持ちがわからない”お医者さんに当たらないために
大塚篤司 大和出版 2020年4月発行
amazon(単行本)

amazon(Kindle版)

 著者は医師で、病院で働きだして気がついたことがあるという。
「それは『空気が読めないお医者さんが多い』ということ。」

 そして、一部の医者は、患者を傷つけてしまうと。
「パソコンばかり見て、最後まで目を合わせてくれないお医者さん。専門用語ばかりでなにをいっているのかわからないお医者さん。」

 これ、よくわかります。
 私の個人的な経験になり、書籍から脱線しますが。

 ある病院で外部から招来した方が、まさにこのタイプで、患者を見ない人でした。
 念のため、他に患者サイドの何人かにも聞きましたが、全く同じ感想「あの人全然ダメでしょ」。

 ところが、病院側は、スタッフ含めて、当初全く逆の感想だったのでビックリ。
 しかし、結局、1年程度で、トラブル起こして離脱。

 この件でわかったのは、医師あるいは病院の世界での評価というのは。
 患者目線の評価とは全く逆のことが、普通にあり得るのだなということ。

 で、書籍の話に戻ると、著者は日本の医学部試験では、コミュニケーションは見ておらず。
 仲間としても空気の読めない医師を何人もみてきて、困らされた体験があると。

 そして、「医者に関して言えば、アスペルガー気質、ADHD気質を持った医者は多いと感じています。」とも。
 このような事実認識の上に、どのように対処すべきか、という話を語ります。

 ただ、著者は、コミュニケーション能力があればよいという立場ではなくて。
 コミュニケーションの話だけで、医学的素養の習得や更新を怠った医療従事者には憂慮していると。

 なるほど。
 そういう人が、マスコミに登場して、誤った知識を伝播させるのでしょうね。

 著者は、血液クレンジングなどの標準医療から隔絶した行為を「トンデモ医療」と呼び。
 強く批判していますが、それらの特徴についても言及しています。

 医学的に効果が証明されない、実証が不可能であるということ。
 にもかかわらず、副作用がないと言い切る保険適応外の行為であること。

 また、絶対という言葉を使うのは、一般的な医師ではないと。
 たぶん、誠実であればあるほど、断言の怖さを知っているからなんでしょうね。

 そして、患者がこれらを誤解する前提として、標準医療とは何かへの誤解があると。
 普通であり、標準の上があるようなイメージの誤解をした結果。

 高額な民間療法やトンデモ医療などの自費治療を、より優れていると誤解すると。
 しかし、実際には、保険適応内で受けられる標準治療こそが最高水準の治療だと。

 エビデンスレベルが高いものが選ばれたものが、標準治療であり。
 現時点での最高峰の医療であるのだとまで言い切ります。

 なるほど、確かにここを誤解している人って、世の中には少なくないでしょうね。
 これらを踏まえて、現時点で患者はどのように情報を取捨選択し、医師と付き合うか。

 医師コミュニティにいながら、こういう本を出すことには、筆者には周囲から批判もあるでしょう。
 ですが、我々患者サイドには有益な示唆が多々あり、まさに歓迎すべき本です。

 そして、この本は、実は、病院関係者が読むべき本でもあると思います。
 上述したような、医療従事者目線と患者目線との齟齬を認識する契機にできるからです。

 更に踏み込めば、医師だけでなく、税理士や弁護士などを見るスキルにも応用できます。
 その意味で、患者という立場だけでなく、広く万人に勧めたい書籍です。

 医師に限らず、専門家が、自分を反省する目を養う機会としても、有益な本でしょう。
 是非、一読をというところです。

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