搬送中の川上慶子さんの毛布を剥ぎ取った報道(【特別手記】「御巣鷹山」48時間の地獄絵図(デイリー新潮))
搬送中の川上慶子さんの毛布を剥ぎ取った報道(【特別手記】「御巣鷹山」48時間の地獄絵図(デイリー新潮))
【特別手記】「御巣鷹山」48時間の地獄絵図
デイリー新潮 国内 社会 週刊新潮 2020年8月13・20日号掲載
必読だと思います。
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息を飲む光景でした。航空機燃料が燃える独特の臭いがして、岩肌には人の内臓がベタッと張り付いている。見上げると、髪の毛が付いた頭皮が木からぶら下がっていました。傾斜がきつく、木の幹に掴まりながら登るのですが、触った瞬間に滑る感じがする。見ると木全体が血と肉片で真っ赤に染まっていました。私の後ろを歩いていて、やはりその“赤い木”を触ってしまった隊員が「ギャーッ」と大声で叫びました。
その時に私が感じたのは、「職業選択を間違えた」ということです。地獄絵図のような現場を目の当たりにして、私は「戦場の光景というのは、多分こういうものだろうな」と考えました。とても耐えられない、おれはこの仕事に向いていない、そう思いました。部下の前では表情にこそ出さないものの、それが本音でした。
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現場を見たものにしか語れない、まさにそういう話です。
もう1つ。
報道にモラルがない人が混じっているのは、以前からという話。
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次が当時14歳だった川上慶子さん。彼女を収容したのが、私の相棒だった作間2曹でした。1人目と同じように、毛布で包んで準備をしていると“事件”が起きました。救出される生存者の姿を撮影したかったのでしょうが、なんと、いつの間にか周りにいた報道陣から手が伸びてきて、毛布を剥ぎ取ったんです。「何をするんだ!」と怒りましたが、もうヘリは真上にいてワイヤが下りてきている。仕方なく、作間2曹は毛布無しで川上さんを抱えて吊り上げられました。
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報道には、どうして資格制度がないのでしょうか。
そして、報道被害補償制度がないのでしょうか。
被害者を作る報道に、報道の自由という言葉を出す資格はあるのか。
最後に、下記ですね。
未だに同じ言葉が繰り返し出る。
「何故、自衛隊の到着が遅れたのか」と批判する人々。
我々自身が、そういう仕組みにしているのでしょう。
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ただ5年前、事故から30年ということであるテレビ局の取材を受けた際、ディレクターから開口一番、「なぜ自衛隊の到着が遅れたんですか」と聞かれたのは心外でした。そもそも当時の災害派遣は、要請を受けて初めて出動できる仕組みでした。勝手に現場に向かうことはできません。
また、「夜のうちに現場へ行けなかったのか」などという人もいます。我々空挺部隊・普通科部隊は深夜の現場であっても救助活動することは可能ですが、輸送に任じた当時の自衛隊のヘリには暗視装置が装備されておらず、暗夜における未知の山地・森林の飛行は危険極まりないものでした。一方で12師団隷下部隊は、夜を徹してまさに暗中模索で現場に向かって山を踏破していたのです。自衛隊はできる限りのことをやったと私は今も確信しています。
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これについては、下記も必読だと思います。
ついに、東大憲法史観を、冷静に批判する東大の学者たちが出てきたということでもあります。
日本人は憲法をどう見てきたか?
『公研』2018年2月号「対話」
境家史郎・東京大学法学部准教授×前田健太郎・東京大学大学院法学政治学研究科准教授
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