要件事実論の完成_ゼロからマスターする要件事実
要件事実論の完成_ゼロからマスターする要件事実
月刊「税理」2020年11月号より。
ゼロからマスターする要件事実 第59回
要件事実論の完成
岡口基一(仙台高等裁判所判事)
元々の法的三段論法では、大前提に立証は入っていなかったけれど。
ローゼンベルグの理論を要件事実論の基礎とするために、組み込んだ。
そうすると、立証されてなければ、請求権は当然不発生になる。
要するに、if-then構造のif節がfalseになるので、then以下はworkしないわけです。
著者は、これは詭弁に近いと言っていますが。
当事者じゃない人間がやる裁判で、割り切って何が悪いのか、正直わかりません。
むしろ、立証という問題の重さを割り切って扱うルールがあるからこそ。
裁判には決着が付くのでしょうに。
刑事事件と違って、民事事件では、どちらも正しいことがある。
その中でいずれかを勝たせる話だというのが、司法書士の山本浩司先生の説明。
まさに、その理解から言えば、割り切りを詭弁だというのなら。
神様の目でも持って来いよって感じなのですが。
なんか読んでいて最近この連載に違和感感じることが多いのは、恐らく実務感覚が感じられないから。
ジャンル違っても、私は実務家なので、なんか学者の空論と同じに感じます。
で、話をこの稿に戻すと。
更に、要件事実論における要件事実の用語も、整合性をとるために変えたのだと。
実務では、請求原因事実とは、元々、請求権の発生のため立証を要する事実のことだったと。
講学上は、請求権の発生要件に該当する具体的事実とされているのと比較すると、ちょっと差異が生じているわけです。
そこで、立証を大前提に組み込むことで、実務の取扱いを説明しやすくしたと。
恐らく、請求原因の要件事実の中が二分されるのでしょう。
元の文章だとわかりにくいのですが。
【1】請求権の発生要件事実そのものが、そのまま請求原因の要件事実になる場合が1つ。
この場合には、何も悩みがない。
ところが、もう1つ、
【2】請求権の発生要件事実そのものが、請求原因の要件事実にならない場合があるのですね。
ここでは、法律上の推定など立証技術に係るルールあるいは立証責任の転換まわりの処理が必要なんだと。
要するに、材料を生のままで料理に使えないことになる。
立証の要素を組み込んだ料理にしないと、食べられないだろうということなのでしょう。
ここで、実務上の用語変更が正当化されたことになるわけですね。
立証技術等により変化が加わったものが、要件事実として扱われざるを得ないだろうと。
うーん、著者が批判してきたものの、一体何が悪かったというのでしょうか。
正直、先人の苦労は分かりますし、叡智を感じるだけなのですが。
逆に、安易だとか問題だとか言う方がおかしいとしか思えません。
いや、私はこのジャンルの専門家じゃないので、あくまでも一読者としての感覚でですけれど。
なお、一番の謎は最後か。
「このようにして要件事実論は、理論的にも確固たるものとなりました。実務の取扱い、そして、ローゼンベルグの「わからない=ない」理論、そのいずれをも説明できる理論として、一つの完成をみたのです。」
うーん、腐しているのか、褒めているのか、さっぱりわからない。
これを見て、この連載の明日が見える人っていらしゃるのですかねぇ。
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