「理想の要件事実」より先に見つかった「理想の法体系」(ゼロからマスターする要件事実)
「理想の要件事実」より先に見つかった「理想の法体系」(ゼロからマスターする要件事実)
月刊税理2021年12月号より。
ゼロからマスターする要件事実 第72回
「理想の要件事実」より先に見つかった「理想の法体系」
岡口基一(仙台高裁判事)
現状3つある発生要件・消滅要件・発生障害要件について。
発生要件・消滅要件は実体法で、発生障害要件は訴訟法でとすれば簡素になると。
つまり、実体法と訴訟法とを完全に棲み分けさせろと。
それを「理想の法体系」だと。
うーん、ユートピアですね。
「人類2000年の悩みが、この連載の72回目にして、ようやく解決に向かい始めた感じになってきましたね。」
税法という、実体法と訴訟法とが未分化な世界に生きている、税理士には、全く響かない言葉なんですよね。
このあたりは、立案担当者でもあった伊藤義一先生の述懐を踏まえればなおさら。
△
税法における立証責任の問題
三つ目は、法務省における仮登記担保法及び民事執行法制定に関与したこと。
(略)
昭和53年に仮登記担保契約に関する法律が、昭和54年に民事執行法が制定された。これらは、いずれも法務省主管であるが、ともに私が担当していた国税徴収法に関係するところから、この2法の法案審査に関与することとなり、そして、その審議過程において税法では考えられない事実を知ったのである。
税法の場合の法案審査は内閣法制局参事官室で行われるが、法務省民事局主管の法案審査は民事局参事官室で行われる。前者の法案は浦野雄幸参事官、後者の法案は田中康久参事官が担当された。そこで、「アレ、これでは立証責任の配分がおかしいね。本文とただし書とを逆にしよう」というような場面が複数回もあったのである。
すなわち、民事関係の法律においては、まず誰に立証責任を負わせるべきかということを決め、そして、法律要件分類説の立場から正義と衡平の理念に基づいた訴訟における立証責任の分配を考慮した条文となっているのである(いわゆる「裁判規範」である)。
これに対して、税法の場合は、納税者の権利と義務は明確か、手続きは納税者にとっても税務官庁にとっても便宜か、負担の公平は保たれているか-等が問題とされており、立証責任の分配に関する議論は一切されていない(いわゆる「行為規範」である)。
ということは、立法するときに立証責任の在り方まで考えて立法する私法とそうでない税法とは違うということであり、税法に法律要件分類説を当てはめるのは間違いということになる。
私は、いろいろなところでこのことを主張しているが、未だ反応が鈍い。
「税と共に歩んだ六十有余年
-生まれ変わっても同じ道を
素晴らしい縁に恵まれ今日まで」
第2回
伊藤義一(元松蔭大学大学院教授 西東京山梨会)
TKC会報2017年5月号より
▽
ユートピアを信じる著者は民事法しか見てないから出てくる言葉なのかな、という気がしてしまいます。
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