未来の法体系を検証してみる_ゼロからマスターする要件事実
未来の法体系を検証してみる_ゼロからマスターする要件事実
税理2022年4月号より。
ゼロからマスターする要件事実 第78回
未来の法体系を検証してみる
仙台高等裁判所判事 岡口基一
未来の法体系を検証してみるとして、債務の履行遅滞に基づく損害賠償について。
具体的に確認してみようということで、今回は「その1」にあたる部分。
ちょい復習で、まず、請求権の発生要件は、要件該当事実がないと擬制するもの。
請求権の発生障害要件は、要件該当事実があると擬制するもの。
民法415条1項における請求権発生のための実体要件は7つあると。
そのうち「期限までに建物を引き渡さなかったことが売主の責めに帰すべき事由によるものであること」は、1項但書により、請求権の発生障害要件とすぐに判断できると。
△
民法 第四百十五条(債務不履行による損害賠償)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
▽
これは、請求権発生の条文では、本文が請求権の発生要件で。
但書が、請求権の発生障害要件という書き分けが基本だから。
ただ、これは常にそうなっているわけではなく、判例や学説が補っており。
裁判実務は、概ねこの考え方によっているのだと。
実際、この場合も、素直に本文・但書というだけでは判断できないですね。
上記の但書要件だけは議論の余地がないようですが。
で、上記但書についての要件以外の6つについて。
ここの著者説明は少しわかりにくいので、以下私が勝手に整理してみると。
【1】本文・但書に記載がある場合
【1-1】記載があるが、立証の不公平が問題にならない
→本文記載されている通り、請求権の発生要件と扱われる。
本件では3つの要件。
事実存否不明なら、事実の存在が擬制される
→未来の法体系では、事実の不存在擬制の証明責任規範ありとされる☆。
【1-2】記載があるが、立証の不公平が問題になる
→本文記載されているが、請求権の発生要件と扱われない場合がある★。
本件では1つの要件。
【2】本文・但書に記載がない場合
→本文・但書に記載がないが、要件と解されているものがある★。
本件では2つの要件。
このようになるのではないかと。
次回、この★部分を説明するそうです。
☆部分も説明を補足してほしい感じですが。
今後何回か説明が続くのでしょうけど、こういう感じで具体的に説明があると。
興味も湧きやすい気がしますが、さて。
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